高齢者のための馬療法:効果と実例
馬を利用した治療(エクイナ・セラピー)は、子どもから大人、シニアまで幅広い年齢層の心身の健康改善に役立ちます。認定された専門家の指導のもと、乗馬活動や馬との交流を通じて認知機能の低下、うつ・不安、運動機能の低下などにアプローチします。
古代の起源
馬の治療効果は紀元前460年頃のヒポクラテスの記述にまでさかのぼります。その後、フランスの神経学者シャサニャック(1875年)は、乗馬が患者のバランス、筋緊張、情緒に与える好影響を実証し、特に脊髄麻痺や神経疾患のリハビリに有用であると結論付けました。
近代エクイナ・セラピーの発展
1918年、理学療法士オリーブ・サンズはイギリス・オックスフォード病院で戦争帰還兵を対象に馬を用いた実験を行い、成功を収めました。1952年のオリンピックでは、麻痺状態のドレサージュ騎手リズ・ハーテルが銀メダルを獲得し、治療乗馬の認知度が大きく高まり、各地でプログラムが設立される契機となりました。
高齢者への効果
医療現場では、動物介在療法が高齢者の精神・感情・身体の健康向上に有効と認められています。米テキサス州オデッサのデーリングス・ナーシング&リハビリテーションでは、馬を使った活動プログラムに参加した入居者の歩行・バランス、言語機能、精神状態が顕著に改善されたと報告されています。
精神健康への影響
馬を伴う心理療法(Equine‑Assisted Psychotherapy)は、うつや孤独感、不安などの心理的課題を抱える高齢者に対し有効です。2007年4月に『Society and Animals』誌に掲載された臨床試験では、6か月後のフォローアップでも参加者が「現在に意識が向く」「過去の後悔や罪悪感が軽減された」「将来への不安が減少した」などの改善を示しました。
ミニチュア馬による訪問療法
施設のスペースや予算が限られる場合でも、ミニチュア馬を活用した訪問プログラムが注目されています。カナダのCBCニュースは、エクイナ・セラピストのメアリー・ガラント氏がミニチュア馬を介護施設や特別支援学校へ派遣し、利用者の身体的・精神的なリハビリを支援している事例を報じました。訪問された高齢者は、馬との触れ合いにより気分が高揚し、日常生活に前向きな変化が見られたといいます。
