組換えヒト成長ホルモン(rhGH)はどのように作られるのか?
組換えヒト成長ホルモン(rhGH)は、自然に分泌されるヒト成長ホルモンと化学的に同一の人工ホルモンです。合成技術が確立される以前は、死体の下垂体前葉から抽出されていました。成長ホルモンは体の成長を促し、炭水化物・脂質・タンパク質・骨の代謝を高めます。
組換えヒト成長ホルモンの製造方法
rhGH の合成は、まず 191 アミノ酸からなるポリペプチドの「開始」部位である最初の 24 アミノ酸をコードする DNA 断片を増幅することから始まります。ヒト下垂体細胞から得た mRNA を逆転写し作成した cDNA が残りのアミノ酸配列を提供します。この完全な遺伝子配列を大腸菌(Escherichia coli)に導入し、バクテリアがホルモンを産生させます。市販されている rhGH には、メチオニンが1つ余分に付加された「ソマトレム」と、純粋な形の「ソマトロピン」があります。
rhGH の効果
【小児】成長ホルモン欠乏症や高度な腎不全と診断された子どもに投与すると、身長の伸長が促進されます。また、脂肪代謝とタンパク質合成を改善するため、栄養不良児の体脂肪が減少し、除脂肪体重と筋肉量が増加します。
【成人】手術後や大規模な火傷による極度のカタボリック状態、腎不全、または獲得性・生理的な成長ホルモン欠乏がある患者に対し、同様のアナボリック効果が期待されます。
適応と副作用
主な適応は、成長ホルモン欠乏による低身長の小児です。高齢者やエイズ関連カヘキシア(悪液質)患者にも、脂肪酸酸化を促進しタンパク質合成を効率化させ、窒素バランスと体重増加を改善する目的で使用されます。
長期使用は心肥大や心臓への負担増大、心血管疾患リスクの上昇につながります。過剰投与は先端肥大症(顔面や手の肥大)、筋症、関節炎、骨粗鬆症を引き起こすことがあります。
成人での使用と乱用
筋肉損傷の治療や高齢者の筋力維持に有効とされるため、アスリートが rhGH を使用するケースがあります。また、老化防止を目的としたサプリメントとしても人気です。
タンパク質合成と筋肉量増加の効果から、ボディビルダーや重量挙げ選手、投げ競技者など体重が重要な競技者が乱用することがあります。しかし、競技における使用はパフォーマンス向上薬とみなされ違法です。さらに、長期使用は動脈硬化のリスクを高めます。
議論と論争
成長ホルモンで低身長児を伸ばすこと自体は医学的に認められていますが、「正常な身長」の基準は専門家間で意見が分かれます。身長が低い子どもはいじめの対象になることもあり、社会的偏見を是正すべきという声もあります。一方で、身長の差は社会的受容の問題であり、医療的介入は必要最小限にすべきだと主張する医師もいます。
明確な「成長ホルモン欠乏」や慢性腎不全の診断がある場合は議論の余地は少ないですが、「分泌不全」や「部分欠乏」など診断が曖昧なケースでは治療の是非が分かれます。
