難燃性衣料の問題点

歴史

1960年代に金属溶解業界で始まった難燃性(FR)衣料は、金属の飛沫によるやけどから作業員を守る目的で導入されました。その後、1970年代に石油精製所、1990年代には電力業界でも採用が拡大しました。火傷防止効果が高い一方で、衣料に含まれる化学処理剤の問題は後回しにされがちでした。

構成要素

メーカーごとに製造・処理工程は異なりますが、難燃性を付与するために使用される化学物質は、一般的な難燃剤と同様です。綿や綿混紡に対しては、アンチモン、塩素、臭素、アンモニア、リン酸塩などが処理剤として用いられ、これらがやけど防止に寄与します。

重金属中毒

アンチモンは重金属で、加熱や洗濯時に有害ガスを放出します。フロリダ州の消防隊員の事例では、アンチモン処理されたFR制服が原因で震えや足趾麻痺といった症状が報告されています。洗濯された衣料から放出されたガスに家族がさらされると、体内のアンチモン濃度が上昇することが確認されています。

皮膚炎

FR衣料は皮膚に直接触れることで化学物質が摩擦し、アレルギー反応を引き起こすことがあります。接触部位が赤く腫れたり、炎症が生じます。また、Basic Red 46 などの染料も一部の作業者に刺激を与えることが知られています。

FR衣料の機能

難燃処理された繊維は、通常の綿製品と異なり火に触れると燃え上がるのではなく、表面が炭化して溶けます。この炭化層が熱エネルギーの伝導を抑え、可燃性ガスの放出を防ぐため、火源が取り除かれた瞬間に燃焼が止まります。

代替選択肢

化学処理を行わない「本体難燃」衣料もあります。ポリエステルなどの繊維構造自体に難燃性が組み込まれているため、後工程での化学薬剤は不要です。化学薬剤が表面に付着しない分、健康リスクは低減されますが、繊維内部に埋め込まれた難燃剤が同様の物質であるため、長期的な曝露リスクは完全には排除できません。

公衆衛生 - 関連記事