高速鋼(HSS)の化学的特性と機械的特性

化学組成

高速鋼は、鉄以外に多数の合金元素を含む特殊鋼です。主な成分と含有率は次のとおりです。

  • 炭素 (C): 0.65〜0.80 %
  • クロム (Cr): 3.75〜4.00 %
  • タングステン (W): 17.25〜18.75 %
  • バナジウム (V): 0.90〜1.30 %
  • コバルト (Co), モリブデン (Mo), アルミニウム (Al): 微量
  • マンガン (Mn): 0.10〜0.40 %
  • ケイ素 (Si): 0.20〜0.40 %
  • ニッケル (Ni): 約0.30 %
  • 銅 (Cu): 0.25 %
  • リン (P): 約0.30 %
  • 硫黄 (S): 約0.30 %

化学組成に基づき、高速鋼は大きく二つに分類されます。

  • T 系(タングステン系)
  • M 系(モリブデン系)

化学組成がもたらす影響

合金元素は機械的特性(強度、硬度、靭性、脆性、延性、加工性)に直結します。また、耐食性にも重要です。

  • 炭素が増えると強度と硬度が向上しますが、延性は低下します。
  • クロムは酸化(錆)を抑える酸化クロム皮膜を形成し、工具の腐食を防止します。
  • モリブデンはスカーレス(擦り傷)を防ぎますが、加工性はやや低下します。
  • タングステンは高温での強度維持に寄与し、切削速度を高めます。
  • バナジウムは微細粒化を促進し、靭性と耐摩耗性を向上させます。

硬度と熱耐性

高速鋼は、600 ℃以上の高温下でも十分な強度と硬度を保持できるよう、熱処理(焼入れ・焼戻し)によって調整されます。その結果、常温でも高温でも高い耐摩耗性と硬度を示し、他の鋼種に比べて高速切削が可能です。この特性が「高速鋼」という名称の由来であり、現代の金属加工産業において不可欠な材料となっています。

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