アルコール依存症治療に用いられた金塩療法
依存症治療の歴史
19世紀後半、金塩(塩化金)はアルコール依存症の根本的な治療法として広く宣伝されました。米国の外科医レズリー・エンラフト・キーリー博士は、金塩療法を掲げて全国に治療施設を展開しました。
ケリー・インスティテュートと「金の治療」
1879年、キーリー博士はイリノイ州ドワイトに最初のケリー・インスティテュートを開設し、アルコール、ニコチン、麻薬依存に「二塩化金」または「ビクロリド金」を用いた治療を開始しました。
実際の成分は金ではない
しかし、当時提供された「金の治療」の液体は金を含まず、ストリキニン、アトロピン、ヒ素、グリセリン、シンコナ抽出物などの有害な薬剤の混合物でした。患者は注射と経口投与の両方を受けました。
初期の集団療法
キーリー博士は患者同士の交流を促し、現代の集団療法の原型となる手法を取り入れました。この心理的サポートが、金塩療法自体よりも治療成功に寄与したと考えられています。
急速な流行と急激な衰退
1890年代には全米にケリー・インスティテュートが設立され、金塩療法は一大ブームとなりましたが、1900年頃にはその有効性が疑問視され、キーリー博士は疑似科学者として批判されました。
疑わしい他の適用例
同時期に金塩は、ループス、結核、神経障害など様々な疾患の治療薬としても提案されましたが、いずれも科学的根拠がなく、後に否定されました。
