幹細胞移植の合併症とリスク
幹細胞移植は、再生不良性貧血、多発性骨髄腫、ホジキン・非ホジキンリンパ腫などさまざまな血液疾患やがんの治療に用いられます。骨髄移植とも呼ばれ、患者自身の骨髄が機能しない場合に、健康な幹細胞を移入して骨髄機能を回復させます。成功すれば血液細胞の産生が正常化し、寛解や治癒が期待できますが、重篤な副作用や合併症も伴います。
移植の種類
- 同種(アロジェニック)移植:患者と遺伝的に近いドナー(兄弟姉妹や親族)から幹細胞を提供します。兄弟が一致する確率は約1/4です。適合ドナーが見つからない場合は、骨髄バンクからマッチングした非親族ドナー(MUD)を探します。双子が同一である場合は「シンジニック」移植と呼ばれます。
- 自己(オートロジー)移植:化学療法や放射線治療の前に患者自身の骨髄から健康な幹細胞を採取し、凍結保存しておき、治療後に戻します。
- 末梢血幹細胞移植(PBSCT):骨髄ではなく、血液中に循環している幹細胞を採取します。アロジェニックでも自己でも実施可能ですが、自己移植が一般的です。
- 臍帯血移植(CBT):臍帯血に含まれる幹細胞を使用します。こちらもアロジェニック移植で、ドナーの適合が必要です。
感染症リスク
米国がん協会によると、移植直後の最も危険な合併症は感染症です。特に移植後最初の6週間は骨髄が白血球を産生し始める前で、患者は好中球減少状態(ニュートロパenia)となります。細菌感染は頻繁に起こり、軽い風邪ウイルスでも重篤化する恐れがあります。予防的に抗生物質や抗ウイルス薬が投与されることが一般的です。
出血リスク
移植前のコンディショニング(化学療法・放射線)により血小板が破壊され、止血機能が低下します。そのため、鼻血、あざ、歯肉出血などが起こりやすく、血小板数が20,000/µL未満になると血小板輸血が必要になります。赤血球の回復にも時間がかかるため、貧血が続く場合は赤血球輸血が行われます。血小板数が正常に戻るまで通常3週間程度要します。
移植片対宿主病(GVHD)
GVHDは主に同種移植で見られ、ドナー由来の免疫細胞が受容体の皮膚、消化管、肝臓などの臓器を攻撃します。移植後10日から70日(多くは約25日)に発症し、軽症から致命的な重症まで幅があります。米国がん協会のデータでは、同種移植患者の約3割から半数がGVHDを経験します。遺伝的適合度が高いほど、若年患者ほど発症リスクは低くなります。
その他のリスク
- 臓器障害(肺、肝臓、腎臓など)や血管障害
- 白内障や皮膚・口腔・肺の二次がん
- 治療に伴う死亡リスク(近年は生存率・寛解率が向上)
幹細胞移植は救命的な治療法ですが、上記のような合併症を十分に理解し、適切な管理とフォローアップが不可欠です。
