骨髄移植の基礎知識
毎年、白血病やリンパ腫、多発性骨髄腫、貧血、免疫系疾患などの治療のために、数千人の成人・小児が骨髄移植を必要としています。Be The Match のレジストリによると、必要な移植のうち約70%が家族内に適合ドナーを持ちません。骨髄ドナーになるか、将来の移植を検討している患者さんは、プロセスを理解することで適切な判断ができます。
骨髄とは
骨の内部には、血液を産生する役割を持つ柔らかく脂肪が多い組織、すなわち骨髄があります。骨髄には、赤血球・白血球・血小板に分化できる未熟な幹細胞が豊富に存在し、これらが血液細胞へと成長します。骨髄移植は、健康なドナーから採取した幹細胞を、がん治療で骨髄が破壊された患者や、骨髄機能が低下した患者に移植する治療法です。
移植の種類
- 自己移植(オートロジー):放射線療法や化学療法の前に患者自身の幹細胞を採取し、治療後に同じ細胞を戻す方法です。
- 同種移植(アロジー):ドナーから患者へ直接幹細胞を移植する方法です。
- 臍帯血移植:出生直後に採取・凍結保存された臍帯血を使用し、必要な患者に移植します。
ドナーの選択
自己細胞が使えない場合、患者は適合ドナーから骨髄を受け取ります。ドナーは患者と同じヒト白血球抗原(HLA)型を持つ必要があり、血液型の一致だけでは不十分です。最も適合しやすいのは患者の兄弟姉妹ですが、家族内に適合者がいない場合は、Be The Match などの登録ドナーリストから検索します。HLA の適合は簡単な血液検査で判定されます。
採取手順
採取はドナーの後部大腿骨(腸骨)から針を刺し、骨髄を吸引します。採取量は成人の約2%に相当する1〜2クォート(約1リットル)です。採取した骨髄はドナーの体内で自然に再生し、長期的な障害はほとんどありません。採取部位に軽い痛みを感じることがありますが、重大なリスクは少ないです。採取後は骨髄を凍結保存し、移植時に使用します。
移植前の準備
患者は放射線療法または化学療法で既存の骨髄を破壊し、移植用のスペースを確保します。この過程で免疫力が低下するため、感染リスクを避けるために病気の人との接触を控える必要があります。また、中心静脈カテーテル(CVC)を胸部に設置し、薬剤投与や血液検査を容易にします。
移植と移植後の経過
化学療法や放射線治療後1〜2日で、凍結保存された骨髄を点滴(IV)で患者に投与します。手術は不要で、ベッドサイドで実施されます。移植後2〜4週間は、移植された幹細胞が定着(エンガフト)し血液細胞を産生し始める最も危険な期間です。この間は感染症の監視が徹底され、血小板輸血が頻繁に行われます。
リスク
骨髄移植は命を救う治療ですが、いくつかの重大なリスクがあります。エンガフト期間中の感染症は最も致命的です。内部出血や、移植がうまく定着しない( graft failure)リスクもあります。ドナーの細胞が患者の体を攻撃する「移植片対宿主病(GVHD)」も起こり得ます。その他、疼痛、貧血、消化器症状、白内障、早発閉経、子どもの成長遅延、肺・心臓・肝臓・腎臓への障害などが報告されています。
