肺がんと腫瘍随伴症候群
米国国立がん研究所によると、2009年だけで肺がんの新規診断は21万9千件以上に上ります。肺がんは肺組織に発生し、主に小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の二種類に分けられます。がん細胞の形態で診断が行われますが、肺がんは腫瘍随伴症候群(パラネオプラスティック症候群)を起こしやすいがんの一つです。本稿ではその症候群の特徴と健康への影響を解説します。
腫瘍随伴症候群の定義
腫瘍随伴症候群は、がん細胞が異常な免疫反応を誘発し、がんと闘う抗体が正常組織、特に神経系を攻撃することで生じます。中高年で肺がん、卵巣がん、リンパ腫、乳がんなどに罹患している患者に多く見られますが、神経系、内分泌系、腎臓、血液、消化管など様々な臓器で発症します。
主な症状
症状はがんが診断される前に徐々に現れ、以下のようなものがあります。
- 言語障害(早口や不明瞭な発音)
- 睡眠障害や過度の眠気
- けいれん発作
- 歩行や嚥下(飲み込み)の困難
- 記憶障害や注意力低下
- 細かい動作の協調障害
- 四肢の感覚異常やめまい
肺がんにみられる腫瘍随伴症候群
小細胞肺がんでは、特に以下の症候群が頻出します。
- ランバート=エトン症候群:筋力低下が顕著で、特に上肢の力が弱くなります。
- ホルモン様物質の産生により、血圧上昇、体重増加、むくみ、低ナトリウム血症、意識障害、けいれんなどが起こります。
- 抗利尿ホルモン(ADH)の過剰分泌により、水分貯留と低ナトリウム血症が生じます。
非小細胞肺がんでも腫瘍随伴症候群は起こりますが、頻度は小細胞肺がんに比べて低いです。
治療方針
小細胞肺がんに伴う内分泌系の症候群は化学療法でがん細胞を減少させることで改善が期待できます。一方、神経系症候群はがん治療だけでは回復が難しく、根本的な治癒法はまだ確立されていません。症状緩和のために以下が行われます。
- 症状に応じた薬物療法(例:抗てんかん薬、抗うつ薬)
- 言語療法・作業療法・理学療法による機能回復支援
- がん自体の手術・放射線・化学療法による根本治療
将来の展望
研究者は腫瘍随伴症候群の疫学的解析や、抗体検査による早期発見・予防法の開発に取り組んでいます。今後はより効果的な治療薬や免疫調整法が期待され、臨床試験への参加が有益な場合もあります。担当医と相談し、最新の研究や試験情報を確認しましょう。
