認知症の臨床的概要
定義
DSM(精神障害の診断・統計マニュアル)では、認知症を「複数の認知機能が低下する状態」と定義しています。言語、計画・判断、簡単な計算、運動、記憶などが障害されます。加齢そのものが原因ではなく、脳疾患、感染、外傷、腫瘍、精神疾患など多様な要因が関与します。40 種類以上の原因が知られており、うつ病や甲状腺ホルモン低下、ビタミン B 欠乏などは可逆的です。
タイプと原因
一次性認知症は脳組織の変性が主因で、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、ピック病などが含まれます。血管性認知症(多発性梗塞性認知症)は脳の小血管の血栓や出血が原因です。レビー小体型認知症はレビー小体の蓄積により神経伝達が阻害されます。アルコール依存や重金属曝露、HIV などの感染症、脳腫瘍・水頭症・硬膜下血腫などの構造異常も認知症を引き起こすことがあります。
症状
DSM‑IV が示す診断基準では、まず記憶障害(新しい情報の学習や既存情報の呼び出し)が中等度以上に低下し、加えて言語障害、実行機能の低下、抽象概念の理解困難、判断力の低下などの認知障害が1つ以上認められます。これらが日常生活に支障をきたすことが必須です。人格変化として、妄想、偏執、気分変動、不安、怒りっぽさなどが見られることがあります。
診断・検査
診断は多面的に行われます。まず詳細な病歴聴取と家族へのヒアリングを行い、続いて精神状態検査(MSE)で指示遂行、記憶、会話、簡単作業、情動状態を評価します。神経学的検査では反射や脳神経の機能を調べます。血液・尿検査で可逆的な原因を除外し、必要に応じてCT、MRI、PET で脳の構造や代謝を確認します。
治療
血管性認知症は血圧管理や生活習慣改善で進行を抑制します。物質依存が関与する場合は依存治療が必要です。腫瘍や頭部外傷、水頭症などは外科的介入が有効です。うつ病が原因の場合は抗うつ薬や心理療法で認知機能が回復することがあります。
不可逆的な認知症では、病態の進行を遅らせる薬物療法が中心です。アルツハイマー病にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が主に使用され、睡眠障害、抑うつ、不安、問題行動に対してはそれぞれの対症薬が処方されます。
