神経解剖学

脳や脊髄を構成する主要な細胞はニューロンです。ニューロンは情報の受信部である細胞体と、情報を遠くへ伝える長い軸索から成り立ち、受け取った信号を他のニューロンへ送ります。この「聞く」部分と「話す」部分が連携することで、感覚・思考・運動が可能になります。

灰白質の細胞的特徴

灰白質は主にニューロンの細胞体が密集した領域です。大脳皮質は灰白質で構成され、意識的な思考や判断の中心です。さらに、視床や基底核などの深部構造も灰白質で、感覚情報の統合や運動制御に関与しています。

白質の細胞的特徴

白質はニューロンの軸索が束になった領域で、軸索はミエリン鞘という白い脂質層で覆われています。ミエリンは信号伝導速度を高速化し、脳内の情報伝達を効率化します。また、白質にはグリア細胞が存在し、ニューロンに栄養を供給したり、感染から保護したりします。

位置の違い

脳では灰白質が外側の表面(大脳皮質)と一部の深部構造に位置し、白質はその内側・中心に近い部分に広がります。そのため、表面的な外傷は灰白質を傷つけやすくなります。対照的に脊髄では灰白質が中心部を占め、白質は外側を取り囲む形になっています。

疾患への影響

神経系の疾患は灰白質と白質のどちらに主に影響を及ぼすかで症状が異なります。認知機能や高次思考に関わる大脳皮質の灰白質が減少すると、アルツハイマー病のように記憶や判断力が低下します(例:2003年の『The Journal of Neuroscience』で報告)。一方、白質が障害されると信号伝達速度が低下し、運動や感覚の障害が現れますが、認知機能は必ずしも著しく低下しません。多発性硬化症は白質のミエリンが破壊される代表的な疾患です。