頭蓋内圧亢進症(頭蓋内高血圧症候群)
頭蓋内圧亢進症(Intracranial Hypertension, IH)は、脳脊髄液(CSF)の産生が過剰になるか、吸収が不十分になることで頭蓋内圧が上昇する状態です。急性と慢性の2タイプがあり、治療は薬物で圧力を調整するか、外科手術で圧力を除去することが主な方針です。
原因
- 急性IH:頭部外傷やくも膜下出血、動脈瘤破裂、脳卒中などに伴う出血が急激に圧力を上げ、適切な処置がなければ致命的になることがあります。
- 慢性IH:原因不明(特発性)と二次性に分けられます。特発性IHは肥満が関与している可能性がありますが、正確なメカニズムは未解明です。二次性IHは脳卒中、血栓、肝腎不全、特定の薬剤(例:抗生物質、アキュテイン、リチウム、ステロイド、ホルモン治療)や感染症(髄膜炎、HIV)などが原因となります。
症状
- 典型的な三大症状は、激しい頭痛、視神経の腫脹による視力障害、脈拍に同期した耳鳴り(脈拍性耳鳴り)です。必ずしもすべてが同時に現れるわけではありません。
- その他の全身症状として、腕・脚・背部の疼痛、頸部硬直、平衡感覚障害、めまい・ふらつき、しびれ・チクチク感、吐き気、鼻からの脳脊髄液漏出などが報告されています。
診断
- 腰椎穿刺(脊髄液採取)によりCSF圧を測定することが最も基本的な検査です。
- 特発性IHの診断は「修正ダンディ基準(Modified Dandy Criteria)に基づき、他疾患の除外を行います。
- 二次性IHは既往歴や服薬歴、基礎疾患の有無を総合的に評価して診断します。
薬物療法
- 炭酸脱水酵素阻害薬(例:アセタゾラミド(ダイアモックス)、ネプタゼン、ラシス、トパマックス)を使用し、CSF産生を抑えて頭蓋内圧を低下させます。効果が認められれば手術の必要がなくなることもあります。
- 頭痛緩和のために、三環系抗うつ薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬が併用されることがあります。オピオイド系鎮痛薬は効果が限定的ですが、疼痛が強い場合に使用されることがあります。
外科的治療
- 視神経浮腫が進行した場合は、視神経開窓術(optic nerve fenestration)で圧力を軽減し、視力保存を目的とします。
- 脳脊髄液シャント手術は、CSFを体内の他部位へ排出し、頭蓋内圧を恒常的に低下させます。視神経浮腫の改善だけでなく、頭痛緩和にも効果があります。
