正常な眼圧とは?範囲・リスク・治療法の全知識
正常眼圧の範囲と意味
健康な目の眼内圧(IOP)は概ね10〜20 mmHgとされています。米国眼科学会(AAO)はこの範囲を大半の成人における正常値と定義しています。
眼圧は水銀柱ミリメートル(mmHg)で表され、測定は眼科で行うトノメトリーが標準です。
眼圧の変動がもたらすリスク
眼圧の上昇(眼圧亢進)は視神経を圧迫し、緑内障の主要因となります。21 mmHgを超えるとリスクは高まりますが、個人差があり、より低い圧でも障害が起こることがあります。
逆に眼圧が低下すると(低眼圧)視覚障害や眼球構造の不安定化を招くことがあります。特に手術後の急激な低下や、特定の全身疾患に伴う低下が問題です。
主なリスク要因は次の通りです。
- ぶどう膜炎や外傷、過去の眼手術
- 先天性の排液異常
- 緑内障や眼圧亢進の家族歴
- 40歳以上の加齢
- ステロイドや特定の薬剤の長期使用
- 色素散布症候群
低眼圧は以下が原因になることがあります。
- 眼手術後の過剰な液体排出
- 水様体産生の低下
- 網膜剥離後の増殖性硝子体網膜症
- マルファン症候群などの結合組織疾患
- ニトロ化合物、抗ウイルス薬(シドホビル)やβ遮断薬などの薬剤
眼圧はどのように測定するか
眼科医は主にトノメトリーで眼圧を測ります。金標準とされるのは平坦化トノメトリーで、以下の手順で行われます。
- 局所麻酔薬(必要なら蛍光色素)を点眼。
- スリットランプ顕微鏡に顎と額を固定し、眼球を観察。
- トノメータのプローブを角膜に軽く接触させる。
- 角膜を平坦化するのに必要な力を測定し、mmHgに換算。
検査は無痛で、まれに表面的な擦り傷ができても自然に治ります。非接触式トノメトリーはエアーパフで瞬間的に圧力を測定し、簡易スクリーニングに適しています。iCareリバウンドトノメーターは携帯型で広く利用されています。
眼圧上昇(眼圧亢進)の治療
まずは点眼薬で水様体の産生抑制や排液促進を行います。主な薬剤クラスは次の通りです。
- β遮断薬(例:チモロール)
- プロスタグランジン類似薬(例:ラタノプロスト)
- 炭酸脱水酵素阻害薬(例:ドルゾラミド、経口アセタゾラミド)
- α2作動薬(例:ブリンゾラミド)
- コリン作動薬(例:ピロカルピン)
- Rhoキナーゼ阻害薬(例:ネタルスジル)
- 一酸化窒素供与体(例:ラタノプロステンブノド)
薬剤で十分に眼圧が下がらない場合はレーザー治療や手術が検討されます。
低眼圧(低眼圧症)の管理
低眼圧の対策は、原因の除去・修正が中心です。漏れや過剰な排液、薬剤副作用が原因の場合、次のような処置が行われます。
- 漏れを封じるための治療用コンタクトレンズ装着
- 組織修復を促す注射薬の投与
- 傷口の縫合
- 粘性剤(粘弾性物質)を用いて前房の形状を調整
研究段階では、眼圧をやさしく上げる新規薬剤も検討されていますが、毒性の問題が残ります。
定期検診の重要性
眼圧の変化は初期段階では自覚症状がほとんどありません。定期的な包括的眼科検診が、眼圧の高低どちらによる視神経障害を防ぐ最善の方法です。
緑内障が進行すると、まずは周辺視野が狭くなり、徐々に中心視力へと影響が広がります。低眼圧の場合は、痛みのないぼやけや微細な視野欠損が現れることがあります。
