月経周期障害についての解説
月経や女性の周期は古くから神秘的なものとされてきました。月経前や月経中に身体的・感情的な症状が現れることから「呪い」とも呼ばれますが、症状が軽い女性にとっては月に3〜7日間の小さな不便に過ぎません。一方、症状が重く生活に支障をきたす女性も少なくありません。
月経サイクルは、出血が始まった日を第1日とし、次の月経が始まる直前までを1サイクルとします。子宮内膜が周期的に剥がれ落ちることが月経です。
月経は概ね11〜14歳で始まり、平均50歳の閉経まで続きます。サイクルは通常25〜36日ですが、思春期の若い女性では45日まで延びることがあります。年齢が上がるにつれてサイクルは長くなる傾向があります。
月経周期障害は、視床下部・下垂体・卵巣・子宮・子宮頸部・膣などのいずれかに問題が生じることで起こります。症状は、月経痛、過多出血、無月経、月経不順など多岐にわたります。主な障害として以下が挙げられます。
無月経(Amenorrhea)
無月経は月経が全く来ない状態で、原発性と続発性に分けられます。
- 原発性無月経:16歳までに月経が来ない、または14歳までに二次性徴が揃わない場合。原因はホルモン調節系の異常(下垂体・視床下部の発達遅延、卵巣や遺伝子異常、低体重・過度の運動、薬剤など)です。
- 続発性無月経:以前は規則的だった月経が3か月以上途絶した状態。低体重、極端な食事制限、強いストレス、過度な運動、卵巣疾患、視床下部性無月経、下垂体腫瘍(プロラクチン分泌)などが原因です。
妊娠・授乳・閉経も無月経の一般的な原因です。無月経が疑われる場合は、医師による問診・身体検査、必要に応じて血液検査が行われ、根本原因の治療が目指されます。
子宮異常出血(Abnormal Uterine Bleeding, AUB)
子宮異常出血は、排卵が起こらない(無排卵)ことが主因で、全症例の約90%で無排卵が関与しています。思春期や閉経前後のホルモン変動が多い時期に頻発します。
- 特徴:月経間の出血、性交後出血、周期中の点状出血、通常より多い・長い出血、閉経後出血など。
- 原因:ホルモンバランスの乱れ、子宮構造の異常、甲状腺疾患、凝固障害、肝腎疾患、白血病、抗凝固薬(例:プラビックス、ヘパリン)や合成ホルモン、IUD(銅T)や流産・子宮外妊娠、筋腫、感染、前癌状態など。
治療は原因に応じて薬物療法、子宮掻爬術(D&C)、子宮全摘出術、その他外科的処置が選択されます。
月経痛(Dysmenorrhea)
月経痛は軽度の痙攣から、月に1〜3日間激しい痛みで日常生活が困難になる重度まで幅があります。原発性と続発性に分類されます。
- 原発性:骨盤に疾患がなく、過剰なプロスタグランジン分泌が原因。思春期に多く見られ、吐き気・頭痛・めまいを伴うことも。
- 続発性:子宮内膜症、IUD、骨盤感染などが原因で、30〜40代の女性に多い。月経開始直後ではなく、月経が確立した後に症状が出る場合は構造的な問題が疑われます。
温熱療法(温罨法・入浴)や市販の鎮痛剤で症状が緩和しない場合は、医師の診察が必要です。治療は原因と痛みの程度に応じて選択されます。
月経前症候群(Premenstrual Syndrome, PMS)
PMSは、排卵後の黄体期(約5〜7日前)に出現し、月経開始とともに消失する身体的・心理的・行動的症状の総称です。約30〜40%の女性が何らかの症状を経験し、30%以上が生活に支障をきたすほど重症化します。
- 主な身体症状:乳房の張り、むくみ、腹部膨満、食欲増進・体重増加、塩味・甘味への渇望、にきび、疲労、心悸亢進、めまい、失神、頭痛。
- 精神・行動症状:気分変動、イライラ、不安、敵意、抑うつ、涙もろさ、自殺念慮、対人関係のトラブル、自己評価の低下など。
原因はホルモンバランス、栄養不足、内分泌異常、生活習慣など多面的で、視床下部‑下垂体‑卵巣軸の周期的活動と関係すると考えられています。診断には他疾患の除外が必要で、治療は生活指導や薬物療法が中心です。
月経前不快障害(Premenstrual Dysphoric Disorder, PMDD)
PMDDはPMSよりも重症で、全女性の約3〜8%が罹患しています。症状は強いイライラ、不安、気分の揺れが特徴で、うつ病や産後うつの既往があるとリスクが高まります。症状は周期的で、月経開始後数日で自然に軽減します。
受診の目安
以下のような変化があれば、速やかに医師に相談してください。
- 月経が7日以上続く、過多出血、月経間出血、骨盤痛が月経と関係しない。
- 15歳までに月経が始まらない、または乳房発育が13歳までに始まらない。
- 月経が突然90日以上止まる、または急に不規則になる。
- 月経間隔が21日未満または45日以上になる。
- タンポン使用後に高熱が出るなどの異常がある。
- 閉経後に膣出血がある場合は直ちに受診。
医師は個々の症状や既往歴を基に最適な検査と治療を提案します。
