男性のテストステロン注射治療
医師は、自然に分泌されるホルモンであるテストステロンの合成版を注射し、テストステロン産生が低下している患者の治療に用います。ただし、特定の既往症がある患者には適さず、様々な副作用や合併症が生じる可能性があります。
テストステロンとは
テストステロンは哺乳類に自然に存在し、男性の精巣(精子産生部位)で主に産生されます。女性の卵巣でもごく少量、男女ともに副腎でも生成されます。テストステロンは筋肉や骨の形成を促す同化作用と、男性化作用(声変わり、ひげの成長など)を持ちます。
製薬会社は、自然ホルモンと構造がほぼ同じで、作用時間を延長した合成テストステロンを提供しています。注射剤としては、テストステロンシピオネートやテストステロンエナンテートが代表的です。
適応症・治療目的
テストステロン注射は、体内で十分なテストステロンが産生されない「低ゴナドトロピン症(低テストステロン症)」の男性に処方されます。先天性疾患(例:クラインフェルター症候群)、視床下部・下垂体の外傷・手術、化学療法、アルコール依存症、肝炎、糖尿病、梅毒などが原因となります。
また、加齢に伴うテストステロンの自然減少(25歳以降、年間約2%)を補う目的で、ホルモン補充療法の一環として使用されることもあります。
期待できる効果
低テストステロンに伴う筋肉量・骨密度の低下、エネルギー不足、性欲低下、記憶力・集中力の低下、疲労感、勃起不全、精神的な不調などを改善し、生活の質を向上させます。
Tulane大学医学センターのWayne Hellstrom医師によれば、投与は個人の自然分泌量に近づけることが理想とされ、一般的な投与量は200〜300 mgを2〜3週間ごとに行います。
使用上の注意点
テストステロンは前立腺を肥大させる可能性があるため、前立腺がんや男性乳癌の患者には禁忌です。また、心血管疾患、肝疾患、血管系疾患の既往がある男性は使用を避けるべきです。糖尿病患者はテストステロンが血糖値に影響を与えることがあるため、インスリン投与量の調整が必要です。
主な副作用とリスク
重篤な副作用として、血液で満たされた嚢胞が肝臓や脾臓に形成される「血管肝炎(ペリオシス肝炎)」があります。コレステロール値の変動により動脈硬化、血栓、脳卒中、心不全のリスクも高まります。
アレルギー反応として、蕁麻疹、発疹、呼吸困難、胸痛、顔面や口腔の腫れが報告されています。
過剰なテストステロンは、体毛増加(多毛症)、男性型脱毛症、性欲変化、にきび・皮脂過剰、女性化乳房(男性胸)や勃起不全を引き起こすことがあります。
合併症・治療上の課題
定期的な注射は患者にとって負担となり、注射部位の膿瘍、感染、瘢痕組織の形成といった局所合併症が起こり得ます。また、テストステロン注射はエネルギー、気分、性欲の変動を引き起こすことがあり、慎重なモニタリングが必要です。
