クロラムフェニコールの細菌に対する効果
化学
クロラムフェニコールの化学式は C11H12Cl2N2O5 です。中性の pH を持つため細胞膜を自由に通過し、重要な臓器へも容易に分布します。この特性により、グラム陽性・陰性の球菌や桿菌など、幅広い細菌に対して作用できます。また、体内で比較的速やかに分解され、尿中に排泄されます。
歴史
1947 年にストレプトマイセス属の Streptomyces venezuelae から抽出され、抗生物質耐性菌に対して強力な効果を示すことが分かりました。チフス流行期に極めて有効であったため、1948 年から大量生産が始まりました。しかし、1950 年代初頭に重篤な副作用が報告され、人間への使用は急速に中止されました。
細菌への作用機序
クロラムフェニコールは細菌のリボソームに結合し、タンパク質合成を阻害します。リボソームでのペプチド結合形成が妨げられるため、細菌は増殖できず、死滅または増殖停止に至ります。一方、哺乳類や鳥類のリボソームは影響を受けにくく、選択的に細菌を標的とします。
副作用
主な副作用は骨髄抑制で、骨髄機能低下や無顆粒球症(再生不良性貧血)を引き起こすことがあります。新生児や胎児が母体から摂取した薬を代謝できずに起こる「灰色乳児症候群」も報告されています。さらに、発がん性が疑われており、使用は慎重に検討されます。
使用上の注意と現在の利用状況
人間への使用は、他の抗生物質が効かない耐性菌感染時に限られます。一方、犬・猫・鳥類は骨髄抑制のリスクが低いため、獣医療で経口抗生物質として広く使用されています。肺炎やクラミジア・リケッチアなどの細胞内寄生菌、さらには中枢神経系、眼、前立腺の感染症治療に有用です。
