転移性脊髄硬膜外疾患(転移性脊髄硬膜外腫瘍)
概要
がん患者の約40%で転移性脊髄硬膜外疾患(転移性脊髄硬膜外腫瘍)が認められます。これは腫瘍が脊髄を圧迫し、神経症状を引き起こす状態です。がんが他臓器へ転移した場合にリスクが高く、死亡時には全患者の50〜75%が何らかの転移を有すると推定されています。
病態と頻度
転移性脊髄硬膜外疾患は、がん細胞が硬膜外腔に増殖し脊髄を圧迫することで発症します。米ユタ大学のKlimo医師らの報告によると、最も頻繁に転移が認められる部位は胸椎で、全転移の約50%は乳癌、前立腺癌、肺癌が原因です。
主な症状
代表的な症状は、腫瘍部位の激しい疼痛と、腫瘍以下の部位における麻痺です。症状の程度に応じて治療方針が決まります。軽度の症状では保存的治療が選択され、重度の場合は外科的減圧や放射線治療が検討されます。
治療法
ステロイド投与
診断が確定した後に、炎症や腫瘍による圧迫を軽減する目的でステロイドが使用されます。ただし、ステロイドは診断遅延のリスクがあるため、確定診断前の使用は推奨されません。
放射線療法
放射線は10〜14日間にわたり実施され、初期に高線量を投与し徐々に減量します。近年では「非従来型」放射線(高精度放射線)により、腫瘍だけを選択的に照射し正常組織へのダメージを最小限に抑えることが可能です。
外科的減圧(ラミネクトミー)
かつてはラミネクトミーが唯一の治療選択肢でしたが、放射線や薬物療法の進歩により、手術は必ずしも第一選択とは限りません。手術は神経圧迫が高度で、他の治療で効果が期待できない場合に検討されます。
予後
多くの患者は末期がんの状態にあるため、治療は主に緩和的です。しかし、適切な治療により生存期間が3か月から36か月に延長されることがあります。治療適応がある患者にとっては、生活の質向上に大きく寄与します。
