脳卒中に対する幹細胞治療の最新研究
脳卒中の概要と原因
米国だけでも年間約80万人が新たに脳卒中を発症し、死亡原因の第3位となっています。脳卒中は、発症後に言語障害や運動障害を残すことが多く、患者の生活の質を著しく低下させます。世界保健機関(WHO)によると、年間1500万人が脳卒中を経験し、うち500万人が死亡、残りの500万人が重度の後遺症を抱えます。
脳卒中の約87%は虚血性(血栓が脳血管を塞ぐ)で、酸素と栄養が供給されなくなるため、数分以内に脳細胞が損傷します。残りの約13%は出血性で、血管が破裂し出血が起こります。
ヒトでの幹細胞実験例
ロンドン・タイムズは、ドイツ・ハノーバーの国際神経科学研究所で行われた、49歳の脳卒中患者への幹細胞治療を報じました。患者本人の骨髄から採取した幹細胞を遺伝子改変し、脳内に注入しました。主な目的は副作用の有無を確認することで、重大な有害事象は観察されませんでした。研究責任者は「回復の道筋が見られた患者はごく一部だが、期待できる開始点である」と述べています。今後、さらなるヒト臨床試験が計画されています。
臨床試験の成果
Medical News Today が報じたテキサス大学ヒューストン校の試験では、61歳の患者が右半身の麻痺と失語症で救急搬入されました。患者自身の骨髄幹細胞を静脈注射した結果、2週間後に歩行・階段昇降が可能となり、会話も徐々に回復しました。この患者は、全10名を対象とした研究の第1例です。
幹細胞による脳損傷修復の研究
スタンフォード大学医学部の研究チームは、マウスを用いて幹細胞が脳卒中後の損傷部位へ移動し、必要な神経細胞に分化するかを検証しました。その結果、一部の細胞は目的の部位に集まり、神経細胞へと変化しました。研究責任者のゲイリー・スタインバーグ博士は「即座に臨床応用できるとは言えませんが、大きな前進です。今後の展望に大きな期待が持てます」とコメントしています。
炎症抑制と再生促進
テキサスA&M大学再生医療研究所の研究では、脳卒中モデルマウスに幹細胞を投与したところ、炎症が最大60%抑制されました。また、一部の幹細胞が新たな神経細胞へと分化し、血管新生や軸索伸長も促進されました。現在はマウス6匹での実験が完了し、さらなる動物実験を経てヒト試験へ移行する計画です。
将来への展望
脳卒中は依然として最も恐れられる疾患の一つですが、幹細胞を利用した新たな治療法の研究が進むことで、患者の予後は改善されつつあります。現在、複数のバイオテクノロジー企業が幹細胞治療の開発に参入しており、臨床応用への道が急速に切り開かれています。
