ユニバーサルヘルスケアに関する議論の欠点
ユニバーサルヘルスケアは、医療費を抑え、すべての米国民に保険を提供することを目指す医療改革の重要な柱です。しかし、費用面での課題から、単純に賛否を決められる問題ではありません。本稿では、ユニバーサルヘルスケアに伴う主なリスクや批判点を整理します。
増税または支出削減
ユニバーサルヘルスケアを実現する資金は、当面は新たな税収や既存予算の削減から賄われます。長期的には、システムの非効率を排除しサービス費用を削減することで自己負担が軽減すると期待されますが、その過程で教育や治安といった他の重要な政府機能とのトレードオフが生じ、別の問題を招く恐れがあります。
ナニーステート(過保護国家)化の懸念
クリスチャン・サイエンス・モニターは、日本が政府主導で生活習慣を規制する「ナニーステート」の例と指摘しています。例えば、肥満者への食事指導や、英国が不健康なイメージの卵広告を禁止するように、米国でもジャンクフード課税やトランス脂肪酸の使用禁止といった規制が進んでいます。ユニバーサルヘルスケアが導入されると、個人の自由を制限する新たな法整備が加速する可能性があります。
自己責任低下によるインセンティブ減少
アイン・ランド研究所のオンカル・ガテは、医療費を意識せずにサービスを受けられると、不要な検査や治療が増えると警告しています。ProCon.org の「モラルハザード」論も同様で、無料の医療が人々の行動責任感を低下させ、結果として医療需要が増大し費用が上昇、さらに提供者への規制が強化されるリスクが指摘されています。
医療の割り当て(レイショニング)
資源は有限であるため、すべての患者が必要な医療をすぐに受けられるわけではありません。政府の判断基準が政治的信条や年齢などに偏ると、医療の配分が不公平になる恐れがあります。カナダや西欧諸国でも、手術待ち時間が長くなるなどのレイショニングが起きており、選択的手術だけでなく、心臓カテーテルやがん治療といった命に関わる治療でも待機が生じています。
