草と人工芝での怪我
人工芝は40年以上前に登場して以来、様々な競技で広く利用されてきました。合成ナイロン製の芝はメンテナンスが容易で、屋内施設でも使用できるという画期的なコンセプトでした。しかし、天然芝に比べて人工芝上での怪我が多いという指摘があり、議論の的となっています。
AstroTurf と FieldTurf
1966年、ヒューストン・アストロドームに導入されたAstroTurfが有名になりました。当時の人工芝はアスファルト上に敷いたパッド付きカーペットにすぎず、選手たちはすぐに怪我の原因として非難しました。この問題を受けて開発されたのがFieldTurfです。個々の合成草ブレードと細かいシリカ砂・ゴムを組み合わせた構造で、衝撃吸収性が向上し、天然芝に近い感触を提供します。
摩擦係数(Coefficient of Friction)
スポーツ医学医師のマーク・ドラコス博士によれば、人工芝(天然芝を含む)の怪我率に影響を与える要因は主に二つあります。その一つが摩擦係数です。摩擦係数が高いほど、足が滑りにくく「芝に足が引っ掛かる」感覚が強くなります。初期のAstroTurfは摩擦係数が高く、これが前十字靭帯(ACL)損傷の増加に関与したと考えられています。
反発係数(Coefficient of Restitution)
第二の要因は反発係数、すなわち衝撃吸収力です。ドラコス博士は、G‑Max値で材料の硬さを評価し、数値が大きいほど硬い表面になると説明しています。コンクリートは非常に高いG‑Max値を持ち、草は低いです。米国消費者製品安全委員会は、G‑Max値が200を超えるフィールドは安全基準を満たさないとし、怪我や脳震盪のリスクが高まると警告しています。
初期のAstroTurfで多発した怪我
初期の人工芝は、選手の怪我率を上昇させました。主な怪我は前十字靭帯断裂、脳震盪、足首捻挫です。また、人工芝特有の「ターフバーン」や「ターフトウ」(硬い表面で足指先に痛みが出る症状)も報告されています。天然芝に比べ、筋肉痛や疲労感が強く出ることも指摘されました。
FieldTurf と天然芝の比較
米国NFLの怪我安全委員会によると、FieldTurfで行われた試合は天然芝に比べて下肢の怪我リスクが27%高く、特にACL断裂や足首捻挫が多く見られました。一方で、人工芝は柔らかいため、頭部外傷は天然芝(乾燥や凍結で硬くなる)より少ないという報告もあります。実際、凍結した草は最も高いG‑Max値を示します。
