がん治療における化学療法の投与方法
口腔内・外用投与(経口・局所)
経口化学療法は、錠剤、カプセル、液体などの形で口から服用します。自宅で簡単に実施できる点が利点ですが、患者の服薬遵守が治療成功の鍵となります。嘔吐や激しい悪心、下痢といった副作用があると、薬の摂取が困難になり、用量や服用間隔の指示を守りにくくなります。また、空腹時・満腹時の違いや服用回数を忘れやすいことも、治療効果に影響します。
外用化学療法は、クリーム・軟膏・ローションの形で皮膚に直接塗布します。主に皮膚がんの治療に用いられます。
静脈内・筋肉内投与(IV・IM・SC)
静脈内投与(IV)は、薬剤と生理食塩水を点滴バッグに入れ、カテーテルを通じて血流に直接注入します。全身に薬が行き渡るため、がん細胞だけでなく正常細胞にも影響が及びます。血中に急速に薬が分布する利点はあるものの、末梢血中に大量のがん細胞がある場合、急激な細胞破壊により有害な老廃物が増加し、肝臓・腎臓などの臓器に過度の負担をかけるリスクがあります。
筋肉内投与(IM)は、薬剤を筋肉に注射する方法です。血中への吸収はIVより遅く、効果は持続的です。皮下投与(SC)も同様に皮膚のすぐ下に注射し、徐々に血液・リンパ系へ薬が拡散します。このため、IVに比べて全身性の毒性が抑えられますが、多くの薬剤が筋肉や皮膚を刺激し、組織損傷を起こす可能性があるため、適応は限られます。
局所・標的投与(Regional/Targeted)
局所化学療法は、薬剤を腫瘍が存在する特定部位に直接届けることで、腫瘍周辺に高濃度の薬を保持し、全身への副作用を最小限に抑える目的で行われます。主な投与法は以下の通りです。
- 動脈内投与(Intra‑arterial):腫瘍に血液を供給する動脈へ直接注入。肝臓や脚の腫瘍に使用。
- 膀胱内投与(Intravesical):膀胱内に薬剤を注入。早期膀胱がんの治療に有効。
- 胸腔内投与(Intrapleural):肺の胸膜や胸壁と肺の間の空間に注入。肺の胸膜がんや乳がんの転移に適用。
- 腹腔内投与(Intraperitoneal):腹腔に薬剤を注入。卵巣がんや一部の結腸がん、盲腸がんの浸潤に使用。
- 髄腔内投与(Intrathecal):脊髄・脳の周囲の脳脊髄液に注入。中枢神経系のがん細胞に対する治療に用いる。
