前立腺がんの放射線治療前に行うホルモン療法
前立腺がんの患者は、再発リスクが高い場合や腫瘍を縮小させて放射線や他の治療でがんを除去しやすくするために、放射線治療前にホルモン療法を受けることがあります。前立腺全摘手術後や、放射線・化学療法を受けたくない患者も同様の選択肢を検討します。治療を選ぶ際は、生活の質、費用、治療の安全性と有効性を十分に考慮する必要があります。
転移抑制
がんが前立腺を超えて転移している場合、根治的な治療は難しいですが、ホルモン療法は転移の進行を遅らせ、生存率を高め、生活の質を維持する効果があります。化学療法や放射線治療に移行する前に、まずホルモン療法が試みられることが多いです。
使用されるホルモンと薬剤
男性ホルモンであるテストステロンやその他のアンドロゲンは、前立腺がんの増殖と転移を促進します。ホルモン療法はテストステロンの産生を一時的または永久的に抑制し、がん細胞への刺激を減らします。主な薬剤は、注射や経口薬で精巣からのテストステロン産生を阻害し、体内の他のアンドロゲンの作用も抑えるものです。
治療の仕組み
一般的に、テストステロンを減少させる薬剤や、男性ホルモンの受容体を遮断する薬剤が用いられます。代表的なものは、抗アンドロゲン薬と黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体です。LHRH類似体は投与開始直後にテストステロンが一時的に上昇(フレア現象)しますが、数週間で低レベルに落ち着きます。骨転移がある患者では、このフレアが痛みや脊髄圧迫を招く恐れがあるため、治療開始時に数週間の抗アンドロゲン併用が推奨されます。過去にはエストロゲンがテストステロン抑制に使われましたが、血栓や女性化乳房などの副作用が問題視され、現在は主に抗アンドロゲンやLHRH類似体が使用されています。
外科的除去(去勢)
一部の患者では、外科的に精巣を除去(去勢)することがあります。精巣は全アンドロゲンの約90%を産生しているため、除去すればホルモンレベルが劇的に低下します。手術は日帰りで行える上、費用面でも最も安価な方法です。ただし、永久的な処置であるため、外見上の違和感や心理的な受容が課題となります。希望する患者には、シリコン製の偽精巣を陰嚢に埋め込む術式も提供されています。
副作用
ホルモン療法には以下のような副作用が報告されています。
- 性欲低下・勃起不全
- 一時的なほてり(ホットフラッシュ)
- 乳房の触痛や肥大
- 骨粗鬆症、貧血、認知機能低下
- 筋肉量減少、体重増加、倦怠感
- コレステロール上昇、血圧上昇、糖尿病、心血管イベントのリスク増大
- うつ状態
抗アンドロゲン単独使用の場合、性欲や勃起への影響は比較的少ないですが、LHRH類似体と併用すると下痢、吐き気、肝機能障害が起こることがあります。多くの男性は数年にわたって安全にホルモン療法を続けられますが、最終的にがんがホルモン非依存性へと変化すると、治療効果が低下し、放射線や化学療法への切り替えが検討されます。
