認知症患者のためのパーソン・センタード・ケア
認知症の方にとって、個々の強みや興味、好み、特定のニーズに焦点を当てた環境を整えることが、最適なケアにつながります。認知症の方は自宅、介護付き住宅、または介護施設のいずれかで生活していますが、どこに住んでいてもその人らしさを尊重したケアが求められます。
認知症とは
認知症は特定の疾患ではなく、脳の機能低下により記憶力、思考力、コミュニケーション能力、行動が影響を受ける症状群です。認知症の方はそれぞれに強みや関心、行動様式が異なるため、個別のニーズに応える患者中心のケアが不可欠です。
患者中心のケア(パーソン・センタード・ケア)
イギリスのトム・キットウッドとブラッドフォード認知症グループは、1980年代後半に「パーソン・センタード・ケア」の概念を提唱しました。このケアは、認知機能の程度に関わらず「人」そのものを第一に考え、本人の視点からの幸福感を重視します。身体的・精神的な健康だけでなく、社会的・精神的な側面も含めた全人的な福祉を目指すものです。
2008年4月に開催されたシンポジウム「介護施設におけるホームの創造」では、パーソン・センタード・ケアと居住環境の重要性が議論されました。その翌年の2009年6月、米国メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は、すべての介護施設入居者に対してこの哲学を採用しました。
オーストラリア・シドニー工科大学の研究者らが行った研究(Lancet Neurology 2009年3月掲載)によれば、パーソン・センタード・ケアを受けた認知症患者は不安や興奮が減少し、穏やかな状態が保たれることが示されています。ただし、同じ患者でも日々の好みや必要は変化するため、ケア提供者は常に個々の変化に注意を払う必要があります。患者に笑顔をもたらすことは、本人の幸福だけでなく、介護者にとっても大きな満足感につながります。
