1型糖尿病に対する幹細胞治療の最前線
幹細胞は体内のすべての組織に存在し、損傷した細胞を修復・置換する能力があります。1型糖尿病では免疫系が膵臓のβ細胞を破壊し、インスリン産生が失われます。近年、幹細胞を用いてβ細胞を再生させ、根本的な治療を目指す研究が進んでいます。
細胞の種類
幹細胞が分裂すると、皮膚細胞や血液細胞、骨・筋肉組織など、特定の機能を持つ娘細胞が生まれます。胚性幹細胞は多分化能が高く、損傷した臓器や組織の修復に最も期待されています。羊水にも多能性幹細胞が含まれ、様々な細胞に分化可能です。成人の体内にも幹細胞は存在し、臍帯血や胎盤、子どもの組織から採取できます。
治療法の探索
幹細胞研究は1型糖尿病の根本治療に向けた最有力なアプローチです。米国のバイオテクノロジー企業Geronは、胚性幹細胞を用いて膵臓のβ細胞を置換できるか検証しています。
臨床試験の結果
米国医学会誌(JAMA)に掲載された臨床試験では、1型糖尿病患者から血液中の幹細胞を採取し、免疫抑制のための化学療法を行った後に再移植することで、インスリン依存がほぼなくなった例が報告されています。
現在の研究課題
完全な治癒法はまだ確立されていませんが、Joslin Diabetes Center などの研究機関は、幹細胞が機能的なβ細胞に分化するために必要な遺伝子のオン・オフを解明しようとしています。また、血液幹細胞を利用して自己免疫攻撃を回避し、移植後の免疫寛容を維持する方法も模索中です。
倫理的・法的な課題
胚性幹細胞は増殖速度が速く多能性が高いため研究の主流ですが、胚を破壊して採取することから「生命の尊厳」に関する議論が起こります。クローン技術は動物実験段階にとどまっていますが、同様に倫理的問題が指摘されています。
