クッシング症候群に伴う胸郭の突出

ヒトのクッシング症候群とクッシング病

クッシング症候群は、ステロイド系薬剤(プレドニゾロンなど)を長期間経口投与した結果起こる二次性の高コルチゾール状態です。一方、クッシング病は下垂体や副腎の腫瘍により体内で過剰にコルチゾールが産生される一次性の疾患です。主に20〜50歳の成人にみられ、肥満、2型糖尿病、高血圧の既往がリスク因子となります。

クッシング症候群(薬剤性)

プレドニゾロン等のコルチコステロイドを数週間から数か月にわたり毎日服用すると、体内のコルチゾール濃度が持続的に上昇し、クッシング症候群が発症します。吸入ステロイドや外用ステロイドは通常、症候群を引き起こしません。

クッシング病(腫瘍性)

下垂体腺腫や副腎腫瘍が原因で、体内に過剰なコルチゾールが分泌されます。症状は疲労感、筋力低下、血圧上昇、上半身肥満、腹部膨隆などです。

イヌのクッシング病

イヌでも体内で過剰なコルチゾールが産生されることでクッシング病が起こります。主に下垂体依存性(下垂体腺腫)と副腎依存性(副腎腫瘍)の2タイプに分かれ、後者は手術で根治可能です。中高齢犬に多く、食欲・飲水・排尿の増加、過呼吸、典型的なポットベリー(腹部膨隆)、活動低下、脱毛、皮膚の薄さや感染が見られます。

胸郭の突出(ポットベリー)

クッシング症候群・病の顕著な特徴のひとつは、腹部に脂肪が集中し、腹筋が弱まることで胸郭が前方に突出し、いわゆる「ポットベリー」外観になることです。ヒトでもイヌでも同様の変化が観察されます。

その他の症状

ヒトでは、肩甲骨間や上背部への脂肪沈着、顔面の丸み、皮膚の薄化・易出血、傷や虫刺されの治癒遅延、うつ状態、疲労感、筋力低下が報告されます。女性では月経不順や体毛増加も見られます。イヌでは、前述の症状に加えて、食欲・飲水・排尿の増加が顕著です。

診断と治療(ヒト)

疑いがある場合、医師は問診と身体検査を行い、薬剤性かどうかを判断します。必要に応じて血液・尿検査、CTやMRIによる画像診断が実施されます。下垂体腺腫が原因の場合は手術による腫瘍除去や放射線治療が選択され、術後はコルチゾール補充のためステロイド薬が処方されます。

診断と治療(イヌ)

血液検査でコルチゾール濃度を測定し、クッシング病と診断します。副腎依存性の場合は腫瘍を外科的に除去すれば根治が可能です。根治できない場合は、米国食品医薬品局(FDA)承認の薬剤Vetoryl(トリロスタン)でコルチゾール産生を抑制します。副作用として食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少が報告されており、肝腎疾患や心疾患、妊娠中の犬への投与は禁忌です。定期的な再診で病状と全身状態をモニタリングすることが重要です。

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