コート病とは? 症状・診断・治療の全て
コート病(Coats' disease)は、網膜の血管が異常に拡張・漏出し、網膜剥離や視力低下を引き起こす希少な特発性血管性疾患です。主に10歳未満の男性に発症し、早期発見と適切な治療が視力保存の鍵となります。
病態生理
コート病は網膜の血管増殖障害により、血液成分が漏れ出しエクスデートが形成されます。病期は大きく2つに分かれます。
増殖前期(プレプロリフェラティブ期)
- 網膜毛細血管拡張(テランジエクトアシス)
- 静脈鬱血
- 微小動脈瘤
- 網膜内・網膜下エクスデート
- 網膜浮腫
エクスデート期(滲出期)
- 広範な網膜下エクスデート
- 網膜下線維化
- 網膜・視神経乳頭の剥離
臨床像
典型的には単眼の視力低下が主訴で、平均発症年齢は6歳です。主な症状は以下の通りです。
- 視力低下、変形視(メタモルフォピア)や白瞳(レウココリア)
- 後極部から始まる周辺エクスデートが網膜層を突破し、黄色白色の沈着物として認められる
- 拡張・蛇行した毛細血管が出血し、液体や脂質の漏出で滲出性網膜剥離を引き起こす
- 網膜剥離は最も頻繁かつ重要な所見で、進行すると黄斑を含む裂孔性剥離へ移行することがある
- 視神経乳頭浮腫が認められることもある
診断
臨床所見が中心です。光干渉断層計(OCT)は病変の評価と治療経過のモニタリングに有用です。蛍光眼底血管造影は必須ではなく、血管拡張の詳細を確認できるものの、治療方針決定にはOCTと同等以上の情報は得られません。
鑑別診断
滲出性網膜剥離を呈する他の疾患との区別が必要です。
- 網膜芽細胞腫
- トキソカリウス症
- 家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)
- 持続性原始硝子体過形成(PHPV)
- 色素失禁症(Incontinentia pigmenti)
- 特発性ぶどう膜炎
治療
早期発見が視力保存の鍵です。主な治療法は以下の通りです。
- レーザー光凝固(アルゴンまたはダイオード)―血管異常部や裂孔を焼灼し、牽引や剥離リスクを低減。中心視力を守るため、黄斑を温存する設定が推奨されます。
- 抗VEGF注射(ベバシズマブ等)―血管新生と透過性を抑制し、網膜下液の減少と視力改善が期待できる。
- 凍結療法(クライオセラピー)―黄斑を伴う大きな網膜剥離に対して適用。
- 光線力学的療法(PDT)は限定的に使用されます。
- 巣状バンドリングは大きな裂孔や黄斑を含む剥離に有効。
- 硝子体手術(ビトレクトミー)は他の治療が効果を示さない場合や増殖性硝子体網膜症(PVR)を伴う重症例に留められます。
予後
診断と治療が早期に行われれば、多くの視力を維持できます。逆に病変が進行し広範な網膜剥離や大量のエクスデートが認められると、永久的な視力喪失のリスクが高まります。予後は主に診断時の病変範囲と治療開始のタイミングに依存します。
