男性のホルモン補充療法(HRT)の副作用
概要
ホルモン補充療法(HRT)は、加齢に伴うテストステロン低下の症状を緩和するための医療プログラムです。男性は18〜25歳でテストステロンの分泌が最も高く、以降は年率約2%ずつ減少します。この自然な減少は、筋肉量・骨密度の低下、エネルギー不足、性欲減退、記憶力・集中力の低下、疲労感、勃起不全、精神的な健康低下などを引き起こすことがあります。HRTはこれらの症状を改善し、生活の質を向上させることを目的としています。
治療では、筋肉内注射、経口投与、皮膚貼付などの方法で合成テストステロンを使用します。投与量は投与経路により異なり、例えば注射の場合は2〜3週ごとに50〜400 mgが一般的です。
禁忌
以下の状態を持つ男性は、テストステロン補充を避けるか、必ず医師と相談する必要があります。
- 前立腺肥大や前立腺がんのリスクがある方(テストステロンは前立腺を肥大させる可能性があります)
- 乳がん、肝疾患、冠動脈疾患、胸痛、コレステロール過多、心不全の既往歴がある方
- 糖尿病患者(テストステロンは血糖値に影響し、インスリン投与量の調整が必要になることがあります)
- ホルモンや添加物(例:注射用テストステロンに含まれるベンジルアルコール)にアレルギーがある方
米国食品医薬品局(FDA)はテストステロンを妊娠カテゴリXに分類しており、胎児に先天性欠損を引き起こすことが確認されています。
肝毒性
長期的なテストステロン使用は、肝臓や腎臓内に血液で満たされた嚢胞ができる「ペリオシス肝炎」を引き起こすことがあります。特に17α-アルキル化された経口テストステロンは、肝臓での代謝が遅くなるため肝毒性が高まります。テストステロンは肝機能を変化させ、ナトリウムや水分の保持を促すため、肝臓・腎臓への負担が増大します。
その他の生理的副作用
テストステロンは血清コレステロールを変動させ、善玉コレステロール(HDL)の低下や高血圧を引き起こすことがあります。これにより心血管疾患や脳卒中のリスクが上昇します。また、黄疸、排尿障害(前立腺肥大による)、にきび、皮脂過多、足・足首のむくみ(浮腫)も報告されています。
精神面では、攻撃性、イライラ、抑うつ、頭痛、興奮、気分の変動などが現れることがあります。
性機能障害
テストステロンは強い男性化作用を持ち、声がさらに低くなったり、過剰な体毛・顔毛が生えることがあります。過剰なテストステロンはエストロゲンに変換されやすく、男性乳房肥大(女性化乳房)を引き起こすことがあり、手術が必要になる場合があります。
HRT中の男性はリビドーの変化や勃起不全を経験することがあります。さらに、外因性テストステロンの長期使用は体内の自然なテストステロン産生を抑制し、治療中止後はヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などで自然産生を再開させる必要が生じることがあります。
投与方法に伴う合併症
投与経路によっても副作用は異なります。
- 注射:膿瘍、感染、性欲・気分・エネルギーの変動
- 経口錠剤:肝障害のリスク増大
- スプレー・パッチ・クリーム:皮膚の発疹・刺激、男性型脱毛症の進行
