認知症の薬物療法

薬物療法の基本

認知症は単一の病気ではなく、さまざまな神経症状の集合体です。主なタイプはアルツハイマー型認知症と血管性認知症です。記憶障害は加齢とともに必ず起こるものではなく、適切な治療で症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが可能です。

コリンエステラーゼ阻害薬

ドネペジル(Aricept®)、リバスチグミン(Exelon®)、ガランタミン(Reminy®)は、アルツハイマー型認知症の初期~中期に使用される薬です。早期に投与を開始すればするほど、症状の安定化効果が高まります。

これらの薬は症状の悪化スピードを遅くしますが、完全に止めることはできません。中止は医師と相談のうえ慎重に行う必要があります。

NMDA受容体拮抗薬

メマンチン(Namenda)は、アルツハイマー患者の記憶力や日常機能を改善するために用いられるNMDA受容体拮抗薬です。疾患の進行そのものを遅らせるわけではありませんが、認知機能の低下を緩和します。

過剰なグルタミン酸は記憶・学習・注意力を阻害します。メマンチンは単独でも、コリンエステラーゼ阻害薬と併用しても使用でき、効果の最大化が期待できます。

降圧薬とスタチン

血管性認知症の患者には、血圧を下げ脳卒中リスクを減らす降圧薬や、動脈硬化を防ぐスタチンが処方されます。高血圧が血栓を形成し、血流が減少して脳細胞が死滅することが血管性認知症の主な原因です。これらの薬は既に起きた細胞死を回復させることはできませんが、さらなる脳損傷の予防に役立ちます。

また、コレステロールが高いと動脈壁にプラークが蓄積し、酸素供給が阻害されます。スタチンはそのプラーク形成を抑える目的で使用されます。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と抗精神病薬

認知症患者はうつ病を併発しやすく、SSRI(例:フルオキセチン、エスシタロプラム)は副作用が比較的少なく、気分安定に有効です。

認知症の進行期には激しい興奮、攻撃性、幻覚、不安などが現れることがあります。このような症状にはリスペリドンやオランザピンといった抗精神病薬が処方されますが、使用にあたってはリスクとベネフィットを医師と十分に相談する必要があります。

支援と準備

認知症の診断は患者本人だけでなく家族にとっても大きな衝撃です。介護者や家族への教育は不可欠で、地域の支援団体やサポートグループを活用することで、病状の変化に応じた適切な意思決定や生活設計がしやすくなります。事前に情報と支援体制を整えておくことで、患者と家族の負担を軽減できます。

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