天候が神経損傷に与える影響
テニス界のレジェンド、モニカ・セレスは1995年の試合中に刺され手術を受けたが、雨や気温が下がると傷口にチクッとした痛みを感じるとSports Illustratedに語っている。傷は治癒していても、天候の変化で残存する神経損傷の感覚が再び現れることがある。
研究
ハーバード大学のロバート・ジャミソン博士は1995年にブリガム・アンド・ウィメンズ病院疼痛管理センターで、天候と神経損傷の関係を調査した。湿度が高く蒸し暑い日には待合室が混雑し、晴天で暖かい日には比較的空いていることに気付いた。
同博士はボストンとウーストチェスター(気候変動が激しい地域)およびサンディエゴ(気候が穏やか)に住む住民を対象に、合計557件のアンケートを配布した。その結果、寒く湿った環境が痛みを増幅させると答える人が多数で、天候が変わる前に神経の感覚が鋭くなると感じるケースも多かった。
ジャミソン博士は1995年9月26日付のHarvard University Gazetteに「気圧の変化が天候と痛みを結びつける主な要因である」と結論付けている。
神経の変化
天候が神経損傷に与える影響は、チクチク感、灼熱感、しびれ、走るような痛みなど多岐にわたる。外傷で神経終末が損傷すると、傷が治癒した後も残存性の神経障害性疼痛(ニューロパチック・ペイン)を感じることがある。
ニューロパチック・ペインは、末梢または中枢神経系の感覚伝達が乱れ、脳が誤った信号を神経に送ることで生じる。天候の変化前後に痛みや異常感覚が増すのは、このメカニズムが関与していると考えられている。
残念ながら、この種の疼痛は薬物療法に反応しにくく、周囲から「頭の中だけのことだ」と軽視されることもある。
治療法
ニューロパチック・ペインを根本的に治す特効薬はないが、症状を緩和する薬は存在する。抗てんかん薬や抗うつ薬は、約3割の患者で痛みや感覚を軽減する効果が報告されている。ただし、めまい、皮膚発疹、視力障害などの副作用が伴うこともある。
薬に頼らないアプローチとしては、TENS(経皮的電気神経刺激)や鍼灸がある。TENS装置は微弱な電流を皮膚越しに流し、過剰に興奮した神経を鎮めることを目的とする。鍼灸も神経のバランスを整える補助療法として有効とされている。
