イオン透過法の両側適用とは?
薬剤やその他の物質を体の特定部位に投与する方法は、投与経路(routes of administration)と呼ばれます。代表的な経路には経口投与、注射、皮膚表面への直接塗布(外用)があります。経皮イオン透過法は、電流を利用して薬剤を健常な皮膚を通過させる代替的な投与経路です。体の両側で実施する場合は「両側イオン透過法」と呼ばれます。
原理
皮膚は選択的に透過性があり、電荷を持たない非イオン化物質はある程度通過できますが、正または負の電荷を持つイオン化物質の通過は阻害されます。イオン透過法は微小な電流を流すことで、イオン化された薬剤粒子を皮膚最外層の角質層(stratum corneum)へと移動させます。これは「正反対の電荷は引き合い、同じ電荷は反発する」という原理に基づきます。心電図で使用されるような電極を用い、薬剤は同じ電荷の電極の下に置き、反対側に反対電荷の電極を配置します。電流が流れると、薬剤は同電極からはじき出され、反対電極へ引き寄せられ、皮膚への浸透が大幅に促進されます。
用途
イオン透過法が適用できる条件は、投与する薬剤がイオン化されていること、そして治療対象が体表面に近いことです。この方法は皮膚、筋肉、関節の疾患に幅広く利用されています。例えば、軽度の外科手術での局所麻酔や、関節や軟部組織の炎症を抑える薬剤の投与に用いられます。特に両側に適用するケースとしては、腋窩・手・足の過剰発汗(一次性多汗症)、顎関節症(TMJ)、リウマチ性関節炎などがあります。投与される代表的な薬剤はコルチゾンやリドカインです。多汗症の治療には水や抗コリン薬が使用され、膵臓の嚢胞性線維症の診断にはピロカルピンのイオン透過が唯一実用的かつ信頼できる検査とされています(Aetna)。
メリット
イオン透過法は痛みがなく非侵襲的な投与経路です。経口投与に伴う胃腸障害を回避でき、注射や点滴に伴う感染・炎症リスクも低減します。また、投与速度を制御でき、患者のコンプライアンス向上に寄与します。総投与量や投与回数の削減が可能になる点も大きな利点です。
デメリット
重大な副作用は稀ですが、手技が不適切だと皮膚がやけどする恐れがあります。一般的に見られる軽微な反応としては、赤み、かゆみ、刺激感があります。また、投与部位の皮膚色が変化することもあります。治療時間や電流強度が増すほど副作用リスクは高まります。ペースメーカーなど電気に敏感な埋め込み医療機器を持つ人や、皮膚が損傷・裂傷している部位への適用は禁忌です。
