医療記録のコンピュータ化が抱える課題
人員要件
米国医療情報学会会長のドン・デトマーによると、オバマ大統領が掲げた全米の医療記録を5年でコンピュータ化する目標を達成するには、約13万人の情報技術者と7万人の情報学専門家が必要とされています。作業は手間がかかり、現在の診療を継続しながら行う必要があるため、たとえ計画的に進めても大きな混乱が予想されます。
最大コストと不確かな利益
医師側の主な反対意見は、電子医療記録への転換に伴う混乱と費用を医師が負担する一方で、得られる利益はほとんどないという点です。米国の調査によると、現在電子医療記録を導入している医師はわずか13%です。資本コストの高さや効果の不確実性が導入の障壁となっています。Health Affairs誌に掲載されたロバート・H・ミラーとアイダ・シムの研究では、診療所単位で紙記録を電子化する初期費用は最大で3万6千ドルに達することが示されています。
ソフトウェア導入と保守
新システム導入時の学習曲線も大きな障壁です。既存システムに慣れたスタッフは適応に時間がかかります。また、IT保守やソフトウェアの陳腐化リスクも問題です。アップグレードが難しい場合、費用と手間がかかる置き換えが必要になる恐れがあります。
プライバシーの懸念
コンピュータによるプライバシーリスクも無視できません。ハッカーによる企業・政府データの流出や、ノートパソコン・メモリーデバイスの取り扱いミスが頻発しています。個人医療情報の漏洩は法的・倫理的問題を引き起こし、訴訟だけでは対処しきれないほど深刻です。
社会化医療への序章?
保守派の論者は、電子医療記録の導入が欧州型の社会化医療への布石だと警鐘を鳴らします。患者情報を追跡し、医療提供を管理・制限する可能性があると指摘しています。実際、コンピュータ化推進はブッシュ政権下で始まったものの、オバマ政権も同様に推進しており、議論は根強く続いています。
