医療保険における詐欺と不正行為

医療保険詐欺と不正行為は米国の医療制度全体に深刻な影響を与えており、莫大なコストがかかっています。ここでは、主な手口とその経済的影響、違法とされる具体例を整理し、読者が実態を把握できるよう解説します。

医療保険詐欺の費用

正確な金額は算出が難しいものの、年間約1,000億ドル(約10兆円)規模と見積もられることがあります。1998年だけでメディケアは約120億ドル(約1.3兆円)の不正請求に見舞われました。米国政府監査局(GAO)によれば、メディケア支出の7分の1が不正・詐欺により失われているとされています。

虚偽請求の手口

最も一般的なのは、実際に提供されていない診療や検査、医薬品に対して請求することです。具体的には、以下のような行為が行われます。

  • 実施されていない手技やサービスの請求
  • 提供した日時や内容を偽って請求
  • 受診者や診断名、料金を偽って請求
  • 必要性のない検査や治療を実施させ、費用を請求

違法とされる行為例

  • a) 保険加入者に対し、未加入者より高額な料金を請求する
  • b) 患者の自己負担額(控除額・共済金)を免除する
  • c) 保険加入者のみに料金を請求し、未加入者には請求しない
  • d) 実施していないサービスに対して料金を請求する
  • e) 「アンバンドリング」―本来一括料金でカバーされる手技を個別に請求する
  • f) 「二重請求」―同一サービスに対し複数回請求する
  • g) 「アップコーディング」―実際より高度な手技として請求する
  • h) 「ミスコーディング」―手技に適さないコードで請求する
  • i) 「キックバック」―紹介料として金銭を受け取る(しばしば賃貸料名義で隠蔽)

検査詐欺

診断検査が本当に必要かどうかは、結果が患者の治療方針に影響を与えるかで判断されます。整形外科やカイロプラクティックの診療所で不適切な検査請求が多く見られ、以下のような検査が乱用されています。

  • a) 関節可動性測定(インクリノメトリー)
  • b) 神経伝導検査
  • c) 表面筋電図(EMG)
  • d) サーモグラフィー(体温差測定)
  • e) 超音波検査(筋痙攣や炎症の診断には不適切)
  • f) 不要なX線撮影
  • g) 脊椎ビデオフルオロスコピー(関節の動きをX線で撮影)

人身傷害詐欺スキーム

一部の弁護士と医療提供者が結託し、軽微または実在しない傷害に対して保険会社へ請求を行います。いわゆる「ランナー」が事故被害者や労災請求者を勧誘し、複数回の診療を受けさせます。その後、医師が不必要な診断と高額な治療を作り上げ、弁護士がその請求を根拠に和解金を交渉します。複数の被保険者が同一の医療機関で同様の治療を受けたことが判明した際に、こうした不正は露見します。

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