子どもの双極性障害とDSMの課題
DSMと双極性障害
DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)は米国精神医学会が発行する精神障害の診断基準書です。最新のDSM‑IVは1994年に出版され、当時は双極性障害は成人に限られると考えられていました。その後の脳科学の進展により、子どもや思春期の早期発症双極性障害が実在することが明らかになりましたが、1994年以来新しい版が出ていないため、公式な診断基準はDSMに記載されていません。
早期発症と成人発症の違い
成人の双極性障害は、一定期間(最低1週間)続く明確な躁(マニア)と抑うつのエピソードが交互に現れます。一方、子どもの双極性障害は、1日で何度も気分が変動する「急速循環」や、持続的なイライラ感が特徴です。そのため、DSMが定める基準を満たさないことが多く、診断が難しいとされています。
早期発症双極性障害の診断
子どもの双極性障害を診断する際は、ADHD、反抗挑戦性障害、行為障害、アスペルガー症候群、不安障害などと区別することが重要です。誤診は強力な薬物治療が無意味、あるいは他の障害を悪化させる危険があります。診断では、躁・うつの基準に加えて、睡眠障害、分離不安、激しい怒りや反抗行動などの特徴も評価します。
早期発症双極性障害の治療
治療の第一目標は、薬物で気分の揺れを安定させることです。リチウムは長年の実績があり第一選択薬とされます。抗てんかん薬(デパコート、テグレトール、ラミクタル、トラペミド、トリレプタル)や抗精神病薬(リスペリダル、ジプレキサ、アビリファイ、ジオドン)も有効です。抗うつ薬は躁状態を誘発する恐れがあるため慎重に使用します。認知行動療法、対人関係・社会リズム療法、家族焦点療法などの心理療法も併用し、子どもと家族が感情・行動を管理できるスキルを習得します。
診断後の支援と長期的展望
双極性障害は生涯にわたる疾患であり、診断後も継続的なモニタリングと治療が必要です。早期に専門家の支援を受け、親が病気や治療法について正しく理解し、積極的にチームの一員として関わることが、子どもの生活の質を大きく左右します。
