酸性雨がもたらす環境への影響
米国環境保護庁(EPA)は酸性雨を「大気中の硝酸と硫酸が通常より多く含まれる湿性・乾性沈着物の混合物」と定義しています。酸性雨は火山噴火や枯死植物の自然放出に加え、化石燃料の燃焼による二酸化硫黄(SO₂)や窒素酸化物(NOx)の排出といった人為的活動でも生じます。
淡水域への影響
酸性雨は川、沼、湖などの淡水環境に酸性化をもたらし、pHが常に低い状態(慢性酸性)になります。pH7が中性で、7未満が酸性、7超がアルカリ性です。pH5では魚卵の孵化が困難になり、さらに低いpHでは成魚が死亡します。その結果、魚類の個体数が減少し、最悪の場合は魚が全く生息しなくなることもあります。これにより食物連鎖が乱れ、生物多様性が低下します。
森林への影響
酸性雨は樹木の葉や針葉を茶色く変色させ、早期に落葉させます。重度の場合、樹木全体や森林の一部が枯死します。EPAは、米国東部の高地森林(メイン州からジョージア州にかけてのアパラチア山脈やグレートスモーキーマウンテン国立公園など)で、酸性雨が森林と土壌の劣化を引き起こしていると報告しています。
建築・材料への影響
酸性雨は銅や青銅などの金属を腐食させ、石材・大理石・塗装を風化させます。建物の外壁が損傷すると維持管理費が増大し、自動車産業でも耐酸性塗料の使用が求められています。
視界と人間の健康への影響
酸性雨に含まれる硫酸塩・硝酸塩は大気中に微細粒子を形成し、視界低下の主因となります。EPAによれば、米国東部における視界低下の50〜70%は硫酸塩粒子が原因です。また、これらの微粒子を吸入すると、気管支炎や喘息などの呼吸器・循環器疾患を悪化させ、早死にリスクも高まります。
