飲料水と地下水に含まれるヒ素の影響

ヒ素は岩石や土壌に自然に存在する元素で、木材防腐剤や半導体、殺虫剤の製造過程でも放出されます(米国環境保護庁 EPA)。その結果、岩石や土壌から溶け出した鉱物が地下水に混入し、適切な処理や濾過が行われない場合、飲料水にヒ素が残り健康に影響を及ぼします。

慢性中毒

無機ヒ素は、魚に含まれる有機ヒ素と異なり非常に毒性が高く、少量でも危険です。世界保健機関(WHO)によれば、長期にわたる飲料水からの摂取が原因で慢性ヒ素中毒が起こります。主な症状は皮膚の色素沈着や角化症、手足のしびれ(末梢神経障害)、貧血、全身倦怠感などです。

がんリスク

ヒ素摂取による最大のリスクはがんです。米国保健福祉省とEPAは「無機ヒ素はヒトに対する既知の発がん性物質」だと認定しており、皮膚、肝臓、膀胱、肺、腎臓、前立腺のがんと関連があります。2000年にコロンビア大学のトム・K・ヘイ博士らが行った研究では、ヒ素が活性酸素種を増加させ、細胞の発がん性変異を誘発することが示されました。

急性中毒

水中のヒ素濃度が極めて高い場合、急性中毒が起こります。米国有害物質・疾病登録局(ATSDR)によれば、肝壊死、急性腎不全、脳症、心血管障害などが急性症状として報告されています。EPAの飲料水基準は10 ppb(10 µg/L)ですが、過去に規制を超える濃度で水を飲んだ米国民は約300万人に上ると報じられています。

有益な利用例

無機ヒ素は有害とされますが、低用量のヒ素トリオキシドは急性前骨髄性白血病(APL)の治療に効果があることが、1988年の『New England Journal of Medicine』で報告されています。

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