塩酸(ミューリック酸)蒸気の吸入がもたらす健康影響
塩酸は1世紀に硝酸と食塩を混合して発見され、中世の錬金術師は「賢者の石」――金属を金に変える化学物質――を求めて利用しました。ミューリック酸は塩酸を薄めたもので、コンクリートエッチング、工業洗浄、バッテリー製造など多くの現場で広く使用されています。
しかし、ミューリック酸の蒸気は極めて有害です。米国環境保護庁(EPA)は安全基準を設定しておらず、液体・気体ともに少量でも高い毒性があると見なされています。
急性の健康影響
- 蒸気を吸入すると、即座に咳や窒息感、胸部の痛み・圧迫感、声がかすれる、喉の痛みが現れます。心拍数の増加や唇・指先のチアノーゼ(青紫色)も報告されています。
- 重症例では、気管や呼吸器の炎症・焼傷、血痰、肺水腫が起こります。EPAの報告(Ref 4)によれば、実験用げっ歯類は蒸気曝露で喉頭や上気道に病変を生じました。
慢性的な曝露の影響
- 長期間の蒸気吸入は歯の腐食や重度の肺障害を引き起こし、慢性気管支炎に至ります。その他、胃炎、気管・鼻腔・喉頭の病変、光過敏症、循環不全、最悪の場合は死亡が報告されています。
がんリスク
- EPAは「ヒトにおける塩酸の発がん性に関する情報はない」としています(Ref 4)。実験動物でも発がん性は認められませんでしたが、研究データが不足しているため、公式ながんリスク分類は行われていません。
