手術用手袋の早期使用

最初の手術用手袋は、1758年にドイツの産科医が羊の腸で作ったものとされています。当時の外科医は普段着に血で汚れたエプロンをかぶるだけで、感染防止の意識はほとんどありませんでした。1840年代になると、解剖学者や病理学者が解剖作業中にゴム手袋を使用し始めました。

硫化(バルカナイズ)で柔軟性が向上

初期の解剖用ゴム手袋は厚く硬く、手術に適しませんでした。1844年にゴッドイヤー社が硫化ゴムを開発したことで、軽くて伸縮性があり、かつ強度のある手術用手袋が実現しました。イギリス人のトーマス・フォスターは、インドラバー・ワークスで硫化ゴム製手袋の特許を取得しています。

抗菌処置の発展と手袋の普及

1860年代、リスター卿がスコットランド・グラスゴー王立病院で手術後の創傷感染防止に炭酸フェノール(カルボリック酸)を用いたことが、世界中の手術室での抗菌処置の標準となりました。1889年、ジョンズ・ホプキンス病院の看護師がカルボリック酸による手荒れに苦しんでいたことから、外科部長ウィリアム・スチュアート・ハルステッドが同社にゴム手袋の製作を依頼し、手術用ゴム手袋が本格的に導入されました。

ジョセフ・ブラッドグッドの推奨

ハルステッドの助手であったジョセフ・ブラッドグッドは、柔軟で扱いやすい新型ゴム手袋の使用を手術チーム全員に奨励しました。その結果、1900年代初頭には外科医や手術室看護師が手袋を常用するようになりました。

豆知識

ハルステッドが手袋を作らせた看護師は、当時彼の婚約者であったキャロライン・ハンプトンでした。

ジョンズ・ホプキンス病院でのラテックス手袋廃止

2008年1月、ジョンズ・ホプキン病院はラテックス手袋の使用を段階的に廃止しました。発表によると、一般人口の約6%、医療従事者の最大15%がラテックスアレルギーを持つことが判明したためです。現在はアレルギー反応を起こさない素材の手術用手袋が使用されています。

ラテックス vs ラテックスフリー手袋

ラテックス手袋の代替品として導入されたラテックスフリー手袋は、アレルギーリスクが低いものの、一部の外科医は破れやすいとの懸念を示しています。2010年の整形外科医年次総会でも、ラテックスフリー手袋の耐久性に関する議論が行われました。