甲状腺手術の手順と種類

甲状腺は首の下部に位置する腺で、ホルモンやタンパク質を産生し、代謝や体内のホルモン応答を調節します。機能異常により甲状腺機能亢進、低下、腫瘍などの問題が起こり、治療として手術が行われます。手術の種類は患者の病状や目的に応じて選択されます。

1. 生検(組織採取)またはルンプトミー

甲状腺の一部を切除し、病理検査用に採取します。細い針で行う細胞診(細胞吸引生検)の結果、がん細胞の有無を確認するために実施されることが多いです。

2. 全摘出術(Total thyroidectomy)

甲状腺全体を除去する最も一般的な手術です。甲状腺がんや進行性の未分化がん・髄様がんに対して行われます。

手術は鎖骨と胸骨が接する部位に約10〜12cm(3〜4インチ)の切開を入れ、首の筋肉はできるだけ動かさずに甲状腺を露出させます。手術時間は概ね2時間以内です。

全摘出後はほぼ100%の確率で甲状腺機能低下症(hypothyroidism)となり、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤の服用が必要です。

3. 片側葉切除術(Lobectomy)

甲状腺の約半分、すなわち一葉を切除します。甲状腺の解剖学的特徴上、完全に切除できないため必ず行われます。

切除した組織は病理検査に回し、良性か悪性かを判定します。がんが認められなければ縫合で閉じますが、がんが確認された場合は全摘出術へ移行します。必要に応じて頸部リンパ節も切除します。

4. 部分摘出術(Subtotal / Partial thyroidectomy)

甲状腺の約半分を残す手術で、手術時間は45分から1時間程度です。

対象は、腫瘍が小さく、単側に限局している場合です。部分摘出後も甲状腺機能低下症になるリスクは高く、米国国立衛生研究所のデータでは約70%の患者が低下症を発症します。過剰甲状腺機能症(hyperthyroidism)にも適用されることがあります。

5. 近全摘出術(Near‑total thyroidectomy)

甲状腺のほぼ全体を除去し、片側に約1cmの残存組織だけを残します。特定の甲状腺がんや薬物療法で制御できない過剰甲状腺機能症の患者に選択されます。手術後は甲状腺ホルモン補充が必要です。

以上が代表的な甲状腺手術の手順とそれぞれの特徴です。患者さんの状態に合わせて最適な手術法が選択されます。

手術(総論) - 関連記事