脾臓摘出(脾臓切除)に関する患者情報
脾臓摘出(splenectomy)は、豆状の免疫器官である脾臓を部分的または完全に取り除く手術です。脾臓は肋骨の裏、左上腹部に位置し、血液の浄化や免疫防御に重要な役割を果たしています。手術は合併症リスクが高いため、熟練した外科医が行う必要があります。
意義
脾臓摘出は米国で小児から成人まで比較的頻繁に行われる手術です。脾臓は免疫システムの中心的存在で、血液中の不純物除去、肝臓への血流調整、古い血球の除去、新しい血球の貯蔵など多岐にわたる機能を担っています。脾臓が機能しなくなると、通常は問題とならない軽微な感染症でも重篤化しやすくなりますが、命に関わる疾患や外傷に対しては、脾臓摘出が生命を救う重要な手段となります。
摘出の適応
摘出が必要とされる主な疾患は以下の通りです。
- 過脾症(脾臓肥大・血球破壊・血球産生低下)
- 脾臓の悪性腫瘍
- 遺伝性球状赤血球症
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や遺伝性楕円形赤血球症など、薬物療法が効果的でない場合
- 脾動脈破裂、外傷、血栓、肝硬変、膿瘍、ホジキンリンパ腫、地中海貧血、骨髄線維症、自己免疫性溶血性貧血など
摘出手術の種類
主に次の3種類があります。
- 全摘出(完全脾臓摘出):全身麻酔下で脾臓全体を除去します。過脾症や破裂した脾臓に適用されます。
- 部分摘出:脾臓の一部だけを残すことで、術後の感染リスクを低減します。
- 腹腔鏡下摘出:小さな切開口を数箇所作り、内視鏡で操作する方法です。感染リスクが低く、術後疼痛が軽減され、入院期間も短く済みます。
回復
術後の回復には時間がかかります。疼痛管理と感染予防のために鎮痛剤や抗生物質が処方され、傷口の清潔保持が重要です。失血や血球異常がある場合は輸血が必要になることもあります。脾臓がなくなることで重篤な感染症リスクが高まるため、発熱や感染兆候は緊急の診療対象です。特に小児は16歳まで予防的に抗菌薬を継続することが推奨されます。
合併症
脾臓摘出はリスクの多い手術です。術後に起こり得る主な合併症は以下の通りです。
- 術後脾臓欠損症候群(post‑splenectomy sepsis)―致死的な感染症で、特に手術後2年以内の死亡リスクが高い
- 膵炎、肺不全、過度の出血、血栓、切開部感染など
長期的な合併症リスクを低減するため、手術前に肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌(H. influenzae)に対するワクチン接種が必須です。
