国立がん研究所の最新治療法ガイド
メイヨークリニックの統計によると、がんは死亡原因の第2位です。がんの治癒率や治療選択肢は、がんの発生部位や転移の有無、患者の既往歴などにより大きく異なります。米国国立がん研究所(National Cancer Institute、NCI)は、NIH傘下の世界屈指のがん研究機関で、最先端の治療法の開発と既存治療の改良に取り組んでいます。臨床試験を通じて、将来的にがんを根本的に根絶することを目指しています。
化学療法(Chemotherapy)
化学療法はNCIが推奨する主要な治療のひとつです。経口投与、注射、外用クリームなどさまざまな形で薬剤を体内に届け、がん細胞を直接攻撃・破壊します。がんの進行度に応じて、完全に治癒させる、増殖を抑える、あるいは末期がんの症状緩和(緩和ケア)に用いられます。通常は手術や放射線療法と併用されます。
化学療法は嘔吐、脱毛、出血などの副作用が強く出やすいため、医師は効果と患者の生活のバランスを取りながら投与量や薬剤の組み合わせ、投与方法を調整します。治療はがんが消失するまで続けられ、再発防止のために一定期間の維持療法が行われることもあります。患者やがん種に応じて、2週間治療→2週間休養というサイクルが採用されることがあります。
放射線療法(Radiation)
放射線療法は、イオン化された放射線をがん細胞に照射し、腫瘍を縮小・破壊する治療法です。主に乳がん、前立腺がん、肺がんなどの実体腫瘍に用いられます。外部放射線(体外から照射)と内部放射線(体内に放射性物質を埋め込む)があります。また、全身に放射性物質を投与する全身放射線療法は、非ホジキンリンパ腫や甲状腺がんに適用されます。
放射線は体内の一部を放射性化させるリスクがあるため、医師は照射範囲を腫瘍に限定し、患者が不必要に放射能を帯びないよう細心の注意を払います。NCIの研究により、照射部位以外への放射能残留は最小限に抑えられています。
外科手術(Surgery)
手術はがんが局所的に限局している場合に、腫瘍やがん細胞を直接除去する根本的な治療法です。腫瘍が大腸にある場合は部分的大腸切除が行われることがあります。手術後は再発防止のため、化学療法や放射線療法が併用されることが一般的です。
すべての手術が開腹手術であるわけではありません。NCIは凍結外科(クリオサージェリー)を一部のがんに推奨しています。液体窒素でがん細胞を凍結・壊死させる方法で、表在がんや早期の骨がん・前立腺がんに有効とされています。現在、乳がんや腎臓がんへの適用可能性も研究中です。
生物学的療法(Biological Therapy)
生物学的療法は、がんに対する体の自然な免疫応答を強化・修正する新しい治療アプローチです。がんワクチンや生物学的応答修飾薬(BRM)などが含まれ、乳がんや肺がんなどに対するワクチン開発が進められています。現段階では、主に化学療法などの副作用緩和や併用療法として利用されています。
研究治療(Research Therapies)
日々、NCIは既存治療の改良や新規治療法の開発に取り組んでいます。代表的な実験的治療として遺伝子治療があります。がんの原因の一つとして、遺伝子の変異や欠損が指摘されており、正常なDNAやRNAを体内に導入して欠損遺伝子を補完する方法です。また、遺伝子改変により既存治療の効果を高めたり、免疫系が自らがんを攻撃できるようにする研究も進行中です。
その他、血管新生阻害剤によるアンジオジェネシス療法、腫瘍組織を高温で破壊する高温療法(ハイパーサーミア)、光感受性薬剤と光を組み合わせてがん細胞を死滅させる光線力学療法(PDT)など、多岐にわたる実験的アプローチが行われています。
