化学療法は最初にいつ使用されたか?
「化学療法」という言葉は、病気の治療に用いられる薬全般を指すこともありますが、ほとんどの場合はがんや腫瘍の治療に用いられる薬剤群を意味します。2009年時点で、100種以上の化学療法薬や生体療法薬が使用されています。薬は錠剤、外用クリーム、静脈注射、あるいは腫瘍への直接注入などさまざまな形で投与されますが、共通するのは「細胞を破壊する」作用です。化学療法は細胞の増殖を阻害し、がん細胞の増殖を抑えることを目的としています。
化学療法の最初の使用例
化学療法の概念は第二次世界大戦にまでさかのぼります。当時、マスタードガスに曝露された人々は白血球数が著しく減少することが確認されました。マスタードガスは細胞を破壊する作用を持つことから、後のがん治療への応用が考えられるようになったのです。
がん治療としての初めての化学療法
1940年代に研究者は、頻繁に増殖する白血球がマスタードガスで減少したことから、同様に増殖の早いがん細胞も破壊できると仮定しました。進行したリンパ腫患者に対し、マスタードガスを静脈注射したところ、一時的に症状が劇的に改善しました。これが現代的な化学療法の原点とされています。
抗葉酸薬の登場
同じ時代の実験に触発され、シドニー・ファーバー博士は葉酸(ビタミンB群の一種)を阻害する薬剤の臨床試験を開始しました。ファーバーは AMT(アンチメチルチオアミン)を白血病児に投与し、葉酸の供給を遮断することでがん細胞の増殖を抑制できることを確認しました。これにより、一時的な寛解が得られ、代謝阻害型化学療法の先駆けとなりました。
6-メルカプトプリンの開発
1984年、ファーバーとスローン・ケタリング病院のバーチェナル医師は、葉酸とがん細胞の関係をさらに追求しました。プリン類は細胞分裂を妨げる作用があり、自然のプリンに似た構造を持つ 6‑メルカプトプリンが開発されました。この薬は細胞の増殖を阻害し、2009年時点でも使用が続いています。
併用化学療法の確立
1955年に国立がん化学療法センターが設立され、化学療法薬の使用は広く受け入れられましたが、異なる薬剤を組み合わせる「併用療法」が本格的に普及したのは1960年代以降です。1960〜70年代に、複数の薬剤を組み合わせることで小児白血病やホジキン病の治癒が可能になることが実証されました。この成果は、現在も続く化学療法の組み合わせ研究の礎となっています。
