がん治療薬の基礎知識:化学療法・ホルモン療法・標的療法・免疫療法
がんと診断されたとき、治療法は複数考えられます。主治医は腫瘍の生物学的特徴に合わせて、化学療法、ホルモン療法、標的薬、免疫療法、あるいはそれらの併用を提案します。
がん薬は大きく4つのカテゴリーに分かれます。
- 速やかに分裂する細胞を攻撃する化学療法薬。
- 腫瘍の増殖を促すホルモンシグナルを遮断・変更するホルモン療法。
- がん細胞に特有の分子経路を阻害する標的療法。
- 免疫系に腫瘍を認識させ、排除させる免疫療法。
これらの治療に伴う副作用を和らげるため、支持療法薬も併せて処方されます。
化学療法
化学療法薬は体内の速増殖細胞を破壊し、腫瘍全体の負荷を減らすことで転移リスクを低減します。根治が可能ながんでは、化学療法が唯一の治癒手段となることもあります。単剤または複数剤のレジメンで、注射・外用・経口のいずれかで投与されます。
米国食品医薬品局(FDA)は現在、約300種類の抗がん薬を承認しており、その多くが化学療法薬です。
ホルモン療法
乳がんや前立腺がんなど、ホルモン依存性のがんはホルモンシグナルが増殖を促進します。ホルモン療法は受容体をブロックしたり、ホルモン産生を抑制したりしてこれらのシグナルを遮断します。
手術や放射線療法と組み合わせることで、治療成績が向上します。
標的療法
標的薬は精密医療の中心です。腫瘍特有の遺伝子変異やタンパク質受容体を阻害することで、がん細胞の増殖を止め、正常細胞への影響を最小限に抑えます。
処方前に腫瘍の遺伝子検査やバイオマーカー検査を行い、適切な分子標的があるか確認します。
免疫療法
免疫療法は患者自身の免疫系を活性化し、がん細胞を認識・排除させます。免疫監視から逃れる腫瘍に対し、その回避機構を解除する作用があります。
点滴や経口カプセルで投与され、がん種に応じて単独または他の治療と併用されます。
支持療法薬
治療に伴う副作用を緩和するため、以下のような薬が処方されます。
- ペグフィルグラステム(Neulasta)やフィルグラストム(Neupogen)などの成長因子製剤:好中球減少と感染予防。
- 制吐薬。
- 鎮痛薬。
自分の治療計画に合った支持薬については、主治医に相談しましょう。
がん薬の効果
がんの種類や病期により、薬剤は以下のような効果が期待されます。
- 転移の予防。
- 腫瘍増殖の抑制。
- 手術がしやすいように腫瘍を縮小。
- 脊髄など重要組織への圧迫を軽減。
- 手術や放射線後の残存がん細胞の除去。
- 他の治療の効果増強。
- 根治可能ながんの治癒。
- 死亡リスクの低減。
リスクと副作用
化学療法は分裂細胞を広く攻撃するため、疲労、脱毛、消化器症状、血液成分の低下などが起こります。標的薬や免疫療法は比較的副作用が軽い傾向ですが、皮膚発疹、肝機能障害、自己免疫反応などが報告されています。
ホルモン療法では、ホットフラッシュ、疲労、乳房圧痛、性欲低下、気分変動、吐き気、下痢などが見られます。
補完的アプローチ
鍼灸、瞑想、特定のハーブサプリなどは副作用緩和に役立つことがありますが、がんそのものを治すものではありません。導入前には必ず主治医に相談してください。
治療方針への患者参加
治療の遅延・拒否やセカンドオピニオンの取得は患者の権利です。信頼できる情報源を確認し、十分に理解した上で意思決定を行いましょう。
臨床試験などの新規治療へのアクセス
臨床試験への参加については、主治医に相談してください。米国国立衛生研究所のデータベースclinicaltrials.govや、国立がん研究所の試験マッチングサービス(800‑4‑CANCER)を活用できます。
医師が治療計画を決める基準
腫瘍の種類・組織型、病期・グレード、分子特徴、患者の年齢・全身状態、そしてNCCN(National Comprehensive Cancer Network)などのガイドラインを総合的に評価して治療法を選択します。
診断には画像検査、血液検査、分子プロファイリングなどが含まれ、最終的には薬物療法と手術・放射線などを組み合わせた総合プランが策定されます。
治療開始前に、期待できる効果・リスク・代替案について医師に詳細を質問し、共有意思決定を行いましょう。
