テロメラーゼとは何か:定義と役割
テロメラーゼは、細胞内に存在するポリメラーゼ酵素で、染色体の末端にある保護複合体「テロメア」のDNA配列を合成します。胚発生期から胚分化が進むまで活性があり、男性の生殖細胞、活性化されたリンパ球、いくつかの幹細胞でも発現します。また、がん細胞の約90%でも活性が認められます。将来的にはテロメラーゼ活性を制御することで、老化や老化関連疾患、がんの治療に応用できる可能性があります。
テロメア
テロメアは靴ひもの先端のプラスチックカバー(アグレット)に例えられます。染色体の末端が「ほつれ」や「融合」から守られ、再組換えを防止します。ヒトのテロメアは約10,000塩基対の長さで、細胞分裂のたびに少しずつ短くなります。若い人は長いテロメアを持ちますが、加齢とともに短くなり、一定の長さ以下になると細胞は分裂できなくなり最終的に死滅します。テロメアが短くなるとDNA複製エラーの蓄積リスクが高まり、疾患の原因となります。
テロメラーゼ
テロメラーゼは、染色体末端にあるテロメアを構成する「TTAGGG」の繰り返し配列を合成します。1985年にGreiderとBlackburnが『Cell』誌で初めて同酵素を同定しました。酵素はテロメアRNA(hTERC)と逆転写酵素活性を持つタンパク質(hTERT)の二つの主要構成要素から成ります。テロメラーゼ活性は転写、mRNAスプライシング、hTERT・hTERC の成熟・修飾など多段階で調節されます。培養細胞ではhTERTとhTERC を同時に発現させることで活性化できますが、体内では多数の補因子が関与する複雑なプロセスと考えられています。
テロメラーゼの意義
テロメラーゼがテロメアを維持しなければ、染色体末端が保護されず、細胞は正常に増殖できません。テロメアが欠如すると、体は病原体に対抗しにくくなり、細胞は増殖停止のシグナルを受け取れず、DNA損傷応答が不適切に活性化されて細胞死を招く恐れがあります。
腫瘍におけるテロメラーゼ
良性・悪性を問わず、腫瘍細胞の約90%でテロメラーゼ活性が認められます。テロメラーゼは染色体テロメアの短縮を防ぎ、腫瘍細胞が無制限に増殖できる「不死化」に寄与しています。
将来展望
現在、研究者は正常細胞とがん細胞におけるテロメラーゼの機能を詳細に解析しています。テロメラーゼの働きを完全に解明すれば、老化プロセスの遅延、早老症の治療、がん治療への新たな戦略が期待されます。
