ホルモン療法の概要と適応
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法は、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンを組み合わせて投与することで、更年期障害の症状(ほてり、気分の変動、尿路・膣の不調など)を緩和します。エストロゲン単独投与は子宮がんのリスクを高めるため、子宮が残っている場合はプロゲステロンが併用されます。子宮摘出術を受けた女性はプロゲステロンは不要です。
この治療は骨粗鬆症や大腸がんの予防、心血管疾患リスクの低減にも効果が期待され、かつては長期投与が推奨されていました。しかし、2000年代初頭の大規模臨床試験で、長期使用に伴う脳卒中、乳がん、心疾患、血栓症のリスク増加が指摘されました。
現在は、短期間の使用で得られるメリットがリスクを上回ると判断されるケースでのみ処方されます。治療を検討する際は、担当医とメリット・デメリットを十分に相談してください。
乳がんに対するホルモン療法
乳がんの約80%は「ホルモン受容体陽性」と呼ばれ、エストロゲンやプロゲステロンががん細胞の増殖シグナルとなります。手術後に腫瘍組織を検査し、受容体陽性が確認された場合、ホルモンの産生を抑制したり、受容体をブロックしたりする薬剤が使用されます。
主な薬剤には、エストロゲン合成阻害薬や選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)などがあります。治療の開始時期や期間は患者個々の状態により異なるため、医師と相談しながら最適なプランを決めましょう。
前立腺がんに対するホルモン療法
前立腺がんはテストステロンやジヒドロテストステロン(DHT)ががん細胞の増殖を促進します。治療では、下垂体からのホルモン放出を抑えるLHRHアナログや、テストステロン上昇を伴わないLHRH拮抗薬が用いられます。さらに、抗アンドロゲン薬を併用して効果を強化することもあります。
ホルモン療法の開始時期や継続方法については、医師の考え方が分かれます。早期に開始する方針や、治療を間欠的に行う方針などがありますので、リスクとベネフィットを理解したうえで、担当医と十分に話し合うことが重要です。
