ブドウ球菌(S. epidermidis)とスクロースの関係:皮膚常在菌が感染とバイオフィルムに与える影響
概要
皮膚や粘膜は常に微生物と接触しており、正常フローラとして約60〜95%を占めるブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が存在します。表面では問題ありませんが、体内に侵入すると感染症を引き起こすことがあります。
臨床的意義
皮膚に広く分布しているため、病院内での感染源となりやすく、手術後の大きな創傷や静脈ライン、尿カテーテル、人工心臓弁・関節置換などの医療機器に付着します。静脈薬物使用者や低体重・早産児もリスクが高いです。
診断と症状
感染初期の症状は頭痛、発熱、倦怠感、食欲不振など一般的な細菌感染と同様です。心内膜炎や全身性敗血症、尿路感染症(排尿時痛・膿の排出)などが起こります。
バイオフィルム(スライム)
S. epidermidisは50層以上の厚さのバイオフィルムを形成し、外科用インプラントや人工関節に付着します。肉眼では見えないため、症状が出るまで存在に気付かれません。
抗生物質耐性
常在菌でありながら院内感染の主要因であるため、広く使用される抗生物質に対して耐性を獲得しています。研究では約80%が耐性を示し、バイオフィルムが抗菌剤と免疫応答の両方を阻害します。
スクロースとの関係
バイオフィルムは多糖類のマトリックスで構成され、スクロースを含む複合糖類の混合培地で特に増殖が促進されます。逆に高濃度の単糖(ブドウ糖)はバイオフィルム形成を抑制します。
臨床応用
スクロースと銀硝酸または銀サルファジアジンを含むポビドンヨード溶液(70%スクロース混合)を外用すれば、カテーテルなどの表面バイオフィルムを除去し、抗菌治療の効果を高めることが期待されます。
