幹細胞による脊髄治療の最前線
幹細胞は体内のすべての細胞の起源となる細胞です。特に胚性幹細胞は多能性(pluripotent)を持ち、あらゆる細胞タイプに分化でき、別の幹細胞へと変化することも可能です。現在、幹細胞は脊髄損傷や、細胞死・機能不全を伴う変性疾患の治療法として研究が進められています。
対象となる疾患
筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、外傷性脊髄損傷など、脊髄に障害を与えるさまざまな疾患に対し、幹細胞治療が検討されています。
脊髄内の固有幹細胞
健康な成人の脊髄にも少量ながら幹細胞が存在し、増殖は遅いものの、軽度の損傷修復に重要な役割を果たすことがMITの研究で示されています。この自然な修復メカニズムを解明すれば、重度の損傷に対する幹細胞療法の開発が期待されます。
ラットでの実験
2005年、アーバイン大学の研究者はヒト胚性幹細胞を用いてラットの損傷脊髄を治療し、哺乳類における有効性の初めての臨床的証拠を示しました。ただし、治療は比較的最近の損傷に限られ、古い損傷では瘢痕組織が再生を阻害しました。
初のヒト臨床試験
2010年1月、ヒト胚性幹細胞を用いた初の臨床試験が実施されました。CNNによれば、60代のALS患者に脊髄内へ胚性幹細胞を注入し、移植は成功したと報告されています。現在もALS患者を対象とした追加試験が進行中です。
胚性幹細胞研究の政治的背景
胚性幹細胞は受精卵から培養されますが、受精卵は体外受精された後に子宮に移植されないため、倫理的議論が根強く残っています。ブッシュ政権下では研究が大幅に制限され、人への臨床試験は禁じられました。一方、オバマ政権以降は規制が緩和され、メイヨークリニックによれば数百件の胚性幹細胞研究が現在進行中です。
