髪の毛分析によるテストステロン系薬物のスクリーニング
テストステロンとは
テストステロンは全てのアナボリックステロイドの基礎となる分子です。男性ホルモンとして、顔の毛や声帯の低下、筋肉増強など男性特有の二次性徴を促進します。体内の約95%は精巣で生成され、残りは腎臓上部にある副腎で作られます。女性もエストロゲンの前駆体として少量のテストステロンを産生し、全身の健康維持に重要です。アメリカ臨床化学会によれば、特定のステロイドは筋力や除脂肪量の増加、攻撃性の向上、回復時間の短縮などの効果が報告されており、これが一部のアスリートに魅力的に映ります。
髪の毛分析の根拠
髪は抜け落ちるまで5〜6年の寿命があり、頭皮の毛包から血流によって栄養が供給されます。そのため、髪が成長する過程で血液中に存在した化学物質が髪内部に取り込まれ、髪の全長にわたって記録されます。さらに、毛包の近くにある皮脂腺も微量の物質を含みます。メディインディアによれば、血液や尿に比べて髪は体内で起きた変化を長期的に保存できるとされています。
髪分析の特徴
従来、尿検査はアスリートの使用薬物検査に用いられてきましたが、投与後2〜4日しかステロイドの代謝産物を検出できません。また、特定ステロイドの代謝産物が検出しにくいという課題があります。Journal of Clinical Chemistry の報告では、髪分析はステロイドの長期使用歴を把握でき、使用された具体的な物質を特定するのに有効とされています。Forensic Science International でも、髪検査は尿検査の有力な補完手段と評価されています。
限界と課題
メディインディアは、髪分析でも偽陽性・偽陰性のリスクがあると指摘しており、結果の信頼性を高めるために他の検査法と併用することが推奨されます。また、検出された物質が医療目的で使用されたものかどうかの判別は難しいです。例えば、ステロイドは骨髄刺激や成長障害、食欲不振、がんやAIDSなどの筋減少症の治療に用いられます。
実施上の留意点
髪分析を受ける際は、現在または過去に服用した医薬品をすべて申告し、偽陽性の可能性を排除してください。
