雇用主が遵守すべき健康保険の法的要件
米国では、マサチューセッツ州など一部の州を除き、法律で従業員に健康保険を提供する義務はありません。しかし、大企業の多くは優秀な人材の確保・定着のために健康保険を提供しています。雇用主が健康保険を提供すると、連邦法および州法で定められた従業員の権利保護に関する規制を遵守しなければなりません。
差別禁止(Anti‑Discrimination)
健康保険を提供する雇用主は、障害や経済的状況に基づく不当な差別を行わず、正社員全員に同等の保障を提供する義務があります。従業員やその家族が健康上の問題を抱えて保険料が上がったからといって、加入を取り消すことは禁じられています。また、低賃金の従業員に対して高額な保険料を課すこともできません。違反した場合、保険会社からの加入拒否や罰則が科されることがあります。
COBRA(連邦保険継続法)
COBRA(Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Act)により、失業や勤務時間の削減、死亡、離婚などで保険が失われた場合でも、12〜18か月間、保険を継続できる権利があります。従業員は保険料全額を自己負担で支払うことで、途切れない保障を受けられます。雇用主は退職・解雇時、または最終勤務日から10日以内に、従業員に書面でCOBRAの権利を通知しなければなりません。
ERISA(従業員退職金・福利厚生制度法)
1974年に制定された連邦法ERISA(Employee Retirement Income Security Act)は、雇用主が自主的に設定した年金や健康保険制度の適正運営基準を定めています。ERISAは、制度参加者の権利保護を目的とし、プランの資金調達・管理方法、受託者のfiduciary duty、加入者の権利などを明示することを求めます。また、適格基準や請求手続き、権利変更などについて、従業員に書面で通知する義務も課しています。
