送電線近くに住むことが健康に及ぼすリスク

送電線とは

送電線(電力送電線、または高圧送電)は、発電所で作られた電力を都市部や人口密集地近くの変電所へ大量に輸送する仕組みです。送電線は電力を消費者へ届ける「道路」のような役割を果たし、複数の線が相互に接続されることで、広域の高圧送電ネットワークが構築されます。

長距離輸送では電力ロスが起こりやすいため、110 kV以上の高電圧が用いられます。先進的な都市では地下に送電線を敷設する例もありますが、工事費が高く、運用面でも制限があります。

送電線近くに住むと考えられる健康リスク

送電線や塔は長距離にわたって電気を輸送するため、電磁界(EMF)や磁場が周囲に放出されます。一般的な送電電圧は 35 kV~65 kV 程度です。

長年にわたり、近くに高圧送電線があると健康に悪影響があると指摘されてきました。米国エネルギー省が 1989 年に公表した報告書では、電磁界への曝露が生体に何らかの影響を与える可能性が示されています。疫学研究では、EMF に曝露した子どもに白血病やがん、心拍異常、流産、低出生体重、先天性欠損などが増えると報告されています。低周波の EMF が腫瘍の増殖を促進したり、細胞間のシグナル伝達を阻害したりする可能性も指摘されています。

影響は曝露量に比例します。電圧が高く、送電線までの距離が近いほど受ける電磁界は強くなります。明確な安全基準はありませんが、一般的に 500 m 以内は「近すぎる」とする専門家が多く、600 m 以上離れることが推奨されています。EMF の高レベルは 50~60 Hz の周波数帯で測定されます。

送電線が健康に与える影響に関する主な研究

  • 2005 年の英国保健省委託「Draper Report」では、送電線から 200 m 以内に住む子どもの白血病リスクが 70 % 増加すると報告されました。
  • 米国コロラド州立大学が実施した長期曝露調査では、ロックアウト山付近に住む住民の脳腫瘍発生率が有意に上昇しました。
  • 1979 年のデンバー市の研究では、電力プラント近隣の子どもの白血病件数が増加していることが示されました。
  • スウェーデン(1992 年)・メキシコ(1993 年)・デンマーク(1993 年)・フィンランドなどの研究でも、送電線付近に住む子どもで白血病やがん、神経系腫瘍のリスクが上がるとの相関が報告されています。
  • 成人に対するリスクに関する研究は 8 件程度報告されていますが、結論はまだ統一されていません。世界保健機関(WHO)も、より多くの長期的かつ大規模な研究が必要としています。

送電線の健康リスクを減らすための対策

  • 自宅・職場・学校が送電線からどれだけ離れているか測定し、できるだけ 600 m 以上離れた場所に住むことを目指す。
  • 子どもを送電線、レーダードーム、変圧器など EMF を放出する設備から遠ざける。
  • 新築や購入を検討する際は、送電線や携帯電話基地局から距離のある土地を選ぶ。

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