なぜ水生植物が汚水処理に利用されるのか
従来の下水処理は高額な設備投資と維持費が必要です。第一段階で無機物や懸濁物を除去し、嫌気性微生物が栄養分を分解します。第二段階では大型タンクとフィルターで水を浄化し、人が利用できるレベルにします。このようなシステムは数百万ドル規模のコストがかかります。代替案として、人工湿地が注目されています。湿地に生息する水生植物は自然に水を浄化し、渡り鳥や魚、カメ、カエルなど多様な生物の生息地も提供します。
水生植物が選ばれる理由
人工湿地では、植物が廃水中の硝酸塩を吸収します。根圏には炭酸ガスと酸素の交換、アンモニウム・硝酸塩の変換、リン酸除去を行う有用な細菌、藻類、真菌が共生しています。また、湿地の土壌は沈殿した重金属や有害物質を吸着し、底部にたまった汚染物質を除去します。
自然な水ろ過
湿地は陸と水の間に自然の緩衝帯を形成し、フィルタタンクと同様に有害金属や化学物質を除去します。主に利用される水生植物は、アシ(bulrush)、ヨシ(cattail)、ミドリウオ(duckweed)、ヒアシンス(water hyacinth)などです。これらの根は窒素や重金属を吸収し、茎葉に蓄えます。同時に根は有益な微生物の増殖を促進し、アンモニウムやリン酸を分解して硝酸塩と酸素を放出します。植物は硝酸塩を取り込み、魚類やその他の水生動物は放出された酸素で呼吸します。
人工湿地は植物に適しているか
濾過に適した種とそうでない種がありますが、ここに挙げた植物は長期間にわたり濾過機能を維持します。濾過により植物が害を受けることは少なく、自然死した際の再植栽コストは、フィルタタンクの保守・交換に比べて格段に安価です。
その他の利用例
人工湿地は汚水だけでなく、雨水流出、農業排水、炭鉱排水、石油精製廃水、埋立地浸出水、養魚池の排水など様々な汚染水の浄化にも利用できます。さらに、紙工場や繊維工場、海産物加工工場の事前処理済み産業廃水の浄化にも有効です。
野生生物へのメリット
人工湿地は水質浄化だけでなく、野生生物にとって豊かな生態系を提供します。かつては荒廃した都市部やゴミ捨て場だった場所が、鳥類、カメ、魚類、両生類の新たな生息地へと変貌します。これにより地域の防災・防疫コストが削減され、自然保護区や公園として市民のバードウォッチングやピクニックの場にもなります。特に渡り鳥は新たな中継地点として利用し、世界各地への移動ルートに欠かせない拠点となっています。
