放射線安全の基本原則
人類が原子の力を利用し始めて以来、放射線の危険性は常に存在しています。放射線漏れはチェルノブイリ事故のような大規模なものだけでなく、わずかな漏れでも吐き気、倦怠感、脱毛、皮膚や粘膜のやけど、さらにはがんやDNA変異といった深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
放射線の基礎知識
放射線は光子などの微小粒子として放出されるエネルギーです。肉眼では見えず、イオン化室やガイガーカウンターといった専用機器でしか測定できません。自然界にもウランやトリウムが存在しますが、核分裂で生成された放射性物質が漏れ出すと危険性が増します。主な放射源は原子炉、核兵器、コバルト‑60(Co‑60)、ヨウ素‑131(I‑131)、セシウム‑137(Cs‑137)などです。また、X線や粒子加速器からも放射線が発生します。
応急処置
放射線に被曝した際の対処法を知っておくことは、命を守る重要な手段です。まず、被曝現場から速やかに離れましょう。汚染された衣服は可能であれば密封容器に入れて除去し、体は石鹸と水でしっかり洗い流します。被曝が重度または長時間に及ぶ場合は、直ちに救急医療を受けてください。
ヨウ素化カリウム(KI)
一部の薬剤は体内の特定の放射性物質の除去を助けます。代表的なのがヨウ素化カリウム(KI)で、タブレット剤として提供されます。KIは放射性ヨウ素による甲状腺がんの予防に有効ですが、他の放射線には効果がありません。理想的には放射性ヨウ素被曝の3時間前に服用し、難しい場合は被曝後10時間以内に摂取します。WHOの推奨量は、成人・思春期は130 mg、3〜12歳の子どもは65 mg、1か月以上の乳児は32.25 mg(半錠)、1か月未満の乳児は1/4錠です。
健康への影響
放射線被曝の健康影響は、被曝量と時間により異なります。線量はグレイ(Gy)で表され、0.15 Gyで男性の一時的無精子症、3.5〜6 Gyで永久的無精子症が起こります。0.5 Gyで血液生成が抑制され、3〜5 Gyで骨髄症候群が発症します。その他、鼻・口・歯茎・直腸からの出血、脱水、下痢、失神、倦怠感、脱毛、嘔吐、皮膚潰瘍、食道・胃・腸の潰瘍、血液吐出などが見られます。
防護対策
放射線防護は「時間・距離・遮蔽」の3つの柱で成り立ちます。被曝時間を短くすれば線量は減少し、放射源から離れるほど被曝は低減します。遮蔽は放射線を吸収する素材で行い、ニュートロンには水、グラファイト、コンクリートが、ガンマ線には鉛や鋼が用いられます。
